染めのこと 大野純子

 

 草木染めについて今 思うこと    2023年2月

 

草木染めは、植物の葉や根や枝や花や実などを煮出して染料をとり、その中に糸や布を浸して染め上げます。

 

初めて染液の中に糸を浸し、引き揚げた時の感動は今でも忘れられません。それから何百回となく草木染をしてきましたが、その都度都度この「糸を浸して引き上げた瞬間」の感動は少しも変わることがありません。さほどに植物のくれる色の美しさ、深さ、豊かさは例えようもありません。

 

草木染めの工程は・・・・全文はこちら→草木染めについて今思うこと

 


 

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 2月    枇杷   椿  蕗  満作    白梻    扉
 3月    黒文字   紅葉苺  虎杖  赤樫    要黐    雪柳
 4月    赤芽槲          小手鞠        花梨  ローズマリー    木通    猿捕茨
 5月    山法師       小米空木   紫式部  ミズキ   青梻   吸い葛   山藍
 6月  木附子他    蓬    桑  楊梅  針桐    真弓   定家葛
 7月  合歓木  待宵草   薇  梔子  犬枇杷   レモングラス     小赤麻 
 8月   桜  葛   珊瑚樹  木槿  松風草   百日紅   烏山椒
 9月  小鮒草他  金木犀     白膠木   芒  蜜柑   現之証拠   無患子
 10月  臭木  冬青   栗  イタヤ楓      背高泡立草   野葡萄   犬黄楊
 11月  山櫨  車輪梅   粗樫   小楢  柊   茜   藪肉桂
 12月   桜  南天   熱海桜   三椏  万両  

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5月7日(土) 

 5月の染料植物 

ヤマアイ(山藍)

 

私たちのよく知っている藍染めに使う藍とは別物です。 藍染めに使うアイ(藍)はタデ科、ヤマアイはトウダイグサ科の植物です。

 

 

 

 

 

 

 

植物染料による草木染という点では藍染めも同じ分類と言えますが、草木染の基本は煮染め。 一方の藍染めは発酵させて藍建てして染色を行うという点で、草木染めとは別の分類が妥当かと思います。 

 

藍は綿、麻と相性の良い染料ですが、それでも何度も何度も染め重ねをしなければ堅牢度に問題は出ます。 私は絹を染めるので、相性の悪い藍染めはしません。

 

青色を染める植物は藍と臭木以外にはありませんので、どうしても青色が欲しくて、プランターでアイを育てて藍の生葉をミキサーにかけて絞った液で染める生葉染めを試したことがあります。 それはそれは惚れ惚れとするような水浅葱色が染まりますが、それも束の間。 日に日に色は飛んでいきます。とても着物に使えるものではありませんでした。

 

さてヤマアイ。 

日本にも自生し、「古事記」の中にも山藍の記述があるそうです。その頃はヤマアイの若葉を擂り潰して布に包んで叩き初めをしていたようです。 アイの生葉染めと同じような手法です。 アイは飛鳥時代に日本に渡来したことを考えれば、もともとの藍染めはヤマアイよるものだったと思われます。 ヤマアイの叩き染めの色は青ではなく緑色で、青を染めるためにはキハダ(黄蘗)を併用していたようです。

 

かつては身近にたくさん生育していたと思われるヤマアイですが、久しぶりに出会いました。


 

 1月の染料植物 

ロウバイ(蝋梅)

 

春を告げる花の一つとしてつとに名高く、また愛でられている花です。 その名のとおり蝋細工のような透き通る薄黄色の花は早春にはいっそう清々しく感じられます。 さらにはその何とも言えない香り。 梅の少し甘いような香りとはまた違った爽やかさがあります。 

 

クスノキ目と聞くと頷けます。 

しかし同じ梅と付いてもこちらはロウバイ科、梅はバラ科です。

 

 

正確には写真のロウバイは全体的に薄黄色のソシンロウバイ(素心蠟梅)です。 

 

内側の花被片が暗紫色のものがロウバイです。 

ソシンロウバイの方が全体的に清らかな感じがして好まれているようです。マンゲツロウバイと言われることもあります。

 

 

染色には葉の茂っている夏場の方が良いと思いますが、残念ながらあまり良くは染まりません。 花を愛でる方が良いようです。 


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 11月の染料植物 

ヤブニッケイ(藪肉桂)

 

温暖な伊豆にはクスノキ科の常緑照葉樹が多く自生しています。 

ヤブニッケイもその一つ。 

クスノキ科特有の爽やかな香りがして、ニッケイほどではないけれども肉桂の代用にも使われ、お茶にしても美味しい植物です。

 

 

 

同じクスノキ科のシロダモも混在してます。 

間違えやすいのですが、シロダモの実は赤、ヤブニッケイは黒紫。 

実のない時期は葉を見ます。

 

 

ヤブニッケイの葉には三行脈と言って、3本の葉脈が良く目立ちます。

 

 

 

クスノキ科の植物は全て煮出している時から良い香りが立ち込めて、楽しい作業となります。 タブノキを煮出した時もトロリとした染液になりましたが、ヤブニッケイもトロミが出ます。 染めムラになりやすいので少し神経を使います。このトロミはクスノキ科の特徴でしょうか。

 


 

 10月の染料植物 

イヌツゲ(犬黄楊)

 

ツゲとイヌツゲはとてもよく似ていて紛らわしい植物です。 伊豆の山中では立派な大木をよく見かけますが、大きくなるのはほぼイヌツゲで、ツゲは成長が遅くて材も硬く将棋の駒に使われることもありますし、ツゲの櫛は私も愛用しています。

 

 

よく似てはいるもののツゲはツゲ科、イヌツゲはモチノキ科です。 

実が生るとはっきりわかるようになります。黒くて真ん丸の実をつけるのはイヌツゲです。 葉もツゲは対生、イヌツゲは互生と違いがあります。

 

 

この真っ黒に熟したイヌツゲの実で一度は染めてみたいと思いつつ、染められるだけの量を集めるのは容易ではありません。 

たわわに実を付けたイヌツゲの実。残念ながら手が届かないほどの大木です。


 

 9月の染料植物 

ムクロジ(無患子)

 

わが家には2本のムクロジがあります。いずれも私が種蒔きをしたもので、ものすごい勢いで大きくなります。 

 

上多賀神社に樹高25mくらい、幹の太さは1mを越えるような大木があります。 

こんなことになると大変なので裏側の1本は成るに任せていますが、表側の1本は大きくならないように芯を詰めています。

 

上多賀神社のムクロジは毎年たくさんの実を落としますので物好きの私は時々拾っています。 大木は他所で育っているのを訪ねた方がよろしいかと思います。 

 

無患子=子が患わ無い、と言われてきたので神社でよく見かけるのかもしれません。

 

 

今や身近なものではなくなり見たことさえない人が増えていることと思いますが、かつては羽根突きの羽の重りの黒い玉に使われていました。 

写真の実は去年のものでずいぶんと茶色くなっていますが、新しいものは緑がかって透き通るような色です。 一回り小さいのが皮を剥いた実です。 これが羽の重りの玉です。 

 

皮は水に入れて擦り合わせるとプクプクと泡立ちます。 

昔は石鹸の代用として使われていたそうです。 

他にもこのようにサポニンを含む植物にサイカチやエゴノキがあります。 

 

アルカリ抽出をすると緑色を染めることができるようですが、私は無理強いしているようでアルカリもしくは酸性抽出をすることはしません。

植物が自然にもたらしてくれる色を大切にしたいと思います。

 


 

 8月の染料植物 

カラスザンショウ

(烏山椒)

 

ちょうど花が咲き始めました。 

ところが実際の花を間近でじっくり見たことはありません。

 

 

 

 

サンショウ、イヌザンショウと同じくミカン科の植物ですが、とても大きく15mくらいにもなります。

上向きに花が咲くので遠くの山で咲いているのを遠目に見ることができるくらいです。

 

普通のサンショウに比べると格段に大きいのでとても同じ仲間とは思えませんが、ミカン科特有の柑橘類の香り、1回奇数羽状複葉、幹には棘のあとがあるのを見ると納得します。 

他のミカン科同様、アゲハチョウの食草でもあります。

 

 

 

 

 

 

どこだったか、カラスザンショウの蜂蜜を見かけたことがあり、意外に思ったことがありますが、豊富な蜜を出すカラスザンショウは優秀な蜜源だそうです。 

今度見かけたら是非食べてみようと思っています。

 


 

 7月の染料植物 

コアカソ(小赤麻)

 

コアカソ、ノマオ、ヤブマオ、ヤナギイチゴ、ラセイタソウ等々、イラクサ科カラムシ属の植物は至る所に見られます。 

 

豊富に採取できてどれもよい染料になります。

 

 

その中でコアカソは赤味の強い良い色が染まりますので、私はよく使います。

 

 

沢沿いや湿り気の多い日陰に生育し、他のカラムシ属の仲間に比べて小ぶりですが、茎や葉柄を見ると赤くコアカソを見つける時の目印にもなります。

 


 

 6月の染料植物 

テイカカズラ(定家葛)

 

つる性の植物でわが家の近くでも山の中でも木の高くまで這い上っているのをよく見かけます。 

 

今は花も盛りを過ぎる頃ですが、まだまだたくさん咲いています。

5弁の花弁は先端が捩れて風車のようです。

 

 

 

 

 

咲き始めの白からだんだん黄色に変わっていき、とても良い香りがします。

常緑なので全体が紅葉したり落葉したりしませんが、秋になると一部の葉が深紅になり、濃緑の葉と混じり合ってとても美しい姿を見せてくれます。

私はこの紅葉がとても好きです。

 

染料としては思いのほかよく染まり、鮮やかに黄色はなかなか秀逸です。

 


 

 5月の染料植物 

スイカズラ(吸い葛)

 

とりわけ夕暮れ時、陽がが落ちるにつれて湿気が上がってくるとどこからか甘い香り。

花を摘まんでは蜜を吸った子供の頃の記憶を呼び覚ます花です。 

つる性の常緑、別名「忍冬」です。 「冬を忍ぶ」素敵な名前ですね。

 

花の咲き始めは白いのですが次第に黄色になってきます。 

ピンク色になるものも時々見かけます。

私は長らく「吸い葛」ではなく「酔い葛」と思ってきました。

酔芙蓉のように花の色が変わることからそう思い込んできたのだと思います。

 

染料としても頼りなげな見た目とは裏腹に割とよく染まります。

 

私はもっぱら花を集めて花酒にして楽しんでいます。


 

 4月の染料植物 

サルトリイバラ(猿捕茨)

 

 

葉の色と変わらない薄黄緑色の花は目立ちませんが、秋になって実が真っ赤に熟すとご存じの方も多いかと思います。

 

 

 

 

都会ではクリスマスシーズンになるとリース用に売られているようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沖縄の伝統染織に使われる染料のひとつでもあります。沖縄ではグールと言い、この辺りで見かけるサルトリイバラと少し違うかもしれません。

オキナワサルトリイバラとかタイワンサルトリイバラとか呼ばれているようです。 

根っこの根茎を使い小豆色を染めます。

 

サルトリイバラはまた、「山帰来」という風雅な名前を持っています。 

昔、山に追いやられた病にかかった若者、年老いた人がこの根を煎じて飲んで元気になり三年後に山から帰って来たとか来ないとか。 

 

今でも使われている生薬です。

 

 

 

 

また、熊本の友人によればお餅などをサルトリイバラの葉で包んでいたとも聞きました。 

昔から身近で様々に利用されてきた植物です。

 


 

 3月の染料植物 

ユキヤナギ(雪柳)

 

一つ一つは小さな花ですが、満開になるとその名のとおり、真っ白な花がみっちり咲いて柳の枝のようにしな垂れて美しい姿を見せてくれる春を告げる美しい花です。 その花をよくよく見れば、なるほどバラ科であることが頷けます。

 

 

 

 

 

バラ科の植物は赤味の色が染まることが多いので好んで使うことも多いのですが、ユキヤナギは黄色系統、鉄媒染をすると緑がかったグレーが染まります。 


 

 2月の染料植物 

トベラ(扉)

 

街中では街路樹や公園に植えられることの多い植物ですが、本来は海岸近くが自生地です。 伊豆では海岸はもとより、私の住む標高400m近くのところでもたくさん自生しています。

 

 

 

 

伊豆>の海岸は常緑照葉樹が豊かです。ウバメガシ、タブノキ、シャリンバイ、マサキ、ヤマモモ、ユズリハ等々、トベラもその一つです。

艶々とした葉は縁が裏側に巻いているので丸く立体的に見えます。

 

節分の折に柊鰯と言って焼いたイワシの頭にヒイラギを刺したものを家の入口に鬼除けとして飾る地方がありますが、ヒイラギではなくトベラを刺すところもあるようです。 

トベラ(扉)の名は、扉に飾った事から付けられた名とも言われているようです。

トベラの葉は切ってみると悪臭がするので鬼除けになると思われたそうですが、青臭いながら悪臭とまではいかないように思います。

 

常緑樹の染めの適期は葉の成熟する2月、遅くとも3月半ばくらいまででしょうか。


 

 1月の染料植物 

サザンカ(山茶花)

 

色の乏しい冬に彩を添えてくれるサザンカの花はとても身近で馴染み多い花だと思います。 

色も様々、もともとは一重が原種ですが、園芸品種も多様で、八重咲の華やかなものもあります。 

 

 

ツバキとサザンカはよく比較されますし、どちらが好きかも好みが分かれるところです。私はツバキでもサザンカでも一重咲きの深紅が好きです。 ポタリと花ごと落ちるので嫌う人もいるツバキの潔さ、花弁がハラハラ一枚づつ散るサザンカ、いずれも風情ありです。

以前ツバキの落花で染めたことがありましたが、花の色素は堅牢度が低く、サザンカも同じだろうと思います。 

剪定した枝葉を使います。冬場は適期です。 

媒染によって黄色から茶色まで染めることができます。


 

 11月の染料植物 

アカネ(茜)

 

 

 

アカネは身近にたくさん生えていて、その茎に逆棘が無数にあるので草むら入ったりするとペタペタくっ付いてくる少々困った草なのですが、古くから赤色の染料として使われ、茜空、茜雲など夕陽の赤の代名詞でもある美しい赤を染めます。 

 

 

 

 

日本アカネは根が細くて染料にするにはかなり難しく、今ではほとんど西洋アカネ、インドアカネが染料として使われています。

 

 

草木染を始めた人なら一度は染めてみたい染料で、私もセッセと何度も何度も染め重ねました。 

 

染色ノートを見返してみたら2001年に染めていますのでずいぶんと月日が経っています。 それには訳があり、着物として織ったものの、しばらく紙に包んで保管をしていたところ紙が真っ赤に染まり、何度紙を替えても同じ繰り返し。 

紫根やアカネといった根を使うものは揮発性の色素を持っているようです。 紫根をビニールに二重に包んで棚に保管しておいたところ棚の木が紫色に染まったこともあります。

 

 

 

 

 

こうした織物を着物として仕立てても保管にかなり注意が必要なこともあり、長らく反物のままで保管していましたが、思い切って友人に洋服に仕立ててもらいました。腕は言うに及ばず、そのセンスの良さ、シンプルなのに洗練されていて、古い着物でリメイクした服にありがちな野暮ったさは皆無です。 

Tシャツなどの普段着以外、私の着る服は100%私の友人の作ったものです。 

 

 

20年の月日を経て形になったアカネ染めの布。 染めの最後にヤシャブシを染め重ねていますので、アカネ単体の染より少し色が渋く落ち着いています。

 


 

 10月の染料植物 

ノブドウ(野葡萄)

 

ノブドウの薄緑や紫、青色、碧色、とりどりの美しい実は宝石のようで秋の日に輝いて思わず見惚れてしまいますが、見るだけにする方がよいかと。

 

 

 

 

 

そのほとんどがブドウタマバエやブドウトガリバチの寄生によって肥大した虫こぶで、本当の実は極々小さくて目立ちません。

 

 

 

 

 

 

 

ブドウを食べると手が紫に染まるので、ブドウの実を使うのですかと聞かれることがよくありますが、アントシアニン系の色素の堅牢度はよくないと思いますので私は使いません。 

 

枝葉ならば問題ないでしょう。

ちょうどこの時期が染めの適期です。

 


 

 9月の染料植物 

現之証拠 (ゲンノショウコ)

 

よく見かけるのはうっすら紫のかかった白い花ですが、珍しくずいぶんと濃い赤紫のゲンノショウコも見つけました。 

 

フウロソウの仲間はちょうど今頃咲き始めます。 

西日本では赤花が多いと聞いていますが、この辺りでは珍しいですね。

 

 

 

整腸剤として下痢にも便秘にも効く民間薬として煎じて飲まれてきて、今でも薬局では売っています。 

私自身はお腹の不調は20歳の頃の盲腸と二日酔いくらいしか思い浮かばないのでお世話になったことはありませんが、「よく効いた=現の証拠」ということらしいですね。 なるほど、なるほど、そのままです。

 

 

染料としも堅牢度が高く優秀です。草木染は生の植物を使うのが基本ですが、ゲンノショウコは乾燥しないと色が出ない数少ない染材です。

 


 

 8月の染料植物 

百日紅 (サルスベリ)

 

フリフリのフリルのような花は子供の頃より馴染み深い花です。 

真夏に長い間咲き続けるので百日紅、その木肌はサルも滑るほどすべすべなので猿滑。 

ヒメシャラやナツツバキ、リョウブの木肌も同じようにスベスベとしています。

 

 

 

 

 

 

夏に山歩きしていると、ひんやりとしてとても気持ちがいいので思わずヒメシャラの木に抱き着いてしまうことがあります。 サルスベリはどうでしょうか。

 

地方によってはヒメシャラのことをサルスベリというところもあるようです。

 

思いのほかよく染まり、鉄媒染の茶色はなかなか美しい色合いです。

 


 

 7月の染料植物 

レモングラス

 

東南アジアが原産のレモングラスは、熱海でも雪の降るわが家ではたっぷり枯葉をかけてあげて冬越しをします。 

 

 

 

 

 

何とか春を迎えるのはヒョロヒョロとした1~2本だけなのですが、夏になるとまあ立派な大株に成長します。1mほどにもなるでしょうか。

 

タイ料理のトムヤムクンには欠かせないレモングラス。

私はもっぱら夏場のハーブティーとして楽しんでいます。熱々のお茶も美味しいけれど、冷やすとまた一段とレモンの香りがさわやかです。 

出し殻もただ捨てません。

入口に撒いておくと、出入りの度に踏んで香りが立ちますし、虫よけにもなります。

 

 

しかし、一番のファンは何と言ってもななちゃんでしょう。ネコ草には見向きもしませんが、レモングラスは私から奪い取る勢いで飛びついてきます。ななちゃん、すごい顔ですねえ!

ススキ、カリヤス、コブナグサと同様イネ科のレモングラスは黄色系の色を染めることができます。 あまりよく染まりませんし堅牢度も疑問ですが、染めている間中爽やかな香りに包まれながら楽しむ染めも気持ちがゆったりしていいのではないでしょうか。


 

 6月の染料植物 

マユミ(真弓)

 

かつては弓に使われたというのでその名が付いたと言います。

 

 

花が終わって実ができ始めています。 

花は色も大きさも全く目立たず、いつ咲いたかさえ見過ごしてしまいますが、この実が熟して割れ、真っ赤な種をのぞかせるようになると、冬枯れの淋しい時期にまるで花が咲いたように華やかな木になります。 

この実が食べられたらいいのにと思いますが、新芽は食べられるものの実は有毒だそうな。 ご注意の程。

 

 わが家からもう少し登った標高500~600mあたりにたくさん自生しています。試し染めをしてみたことがありますが、あまりよくは染まらなかったと記憶しています。


 

 5月の染料植物 

アオダモ(青梻)

 

この付近にはシロダモがたくさん自生していますが、同じ仲間ではありません。 

シロダモはクスノキ科シロダモ属、アオダモはモクセイ科トネリコ属です。 

 

 

花を見るとなるほどトネリコだと納得します。伊豆ではあまり見かけません。あるいは高木になるというので気づかないだけかもしれません。

 

熊本に行った時に町の街路樹にも庭木にもたくさん植えられていたのが印象的でした。庭木や街路樹にも流行り廃りがあるようですが、しなやかな樹形と優しくて涼し気な枝ぶり、アワアワと儚いような花は熱い地方では好まれるのかもしれませんね。

 

 

 

材は硬いけれど柔軟性があり、イチロー選手がバットの素材として使っていることは有名です。

 

 

 

 

あまり手に入らないので染めたことはありませんが、木を見ずに浸けると青色の発光色になると聞いています。

 

是非一度試してみたいものです。

 


 

 4月の染料植物 

アケビ(木通)

 

アケビの実はよく知られていると思いますが、木に這い上っていて目に付きにくく派手な色合いでもないため、花にはなかなかお目にかかれないのではないでしょうか。

 

紅紫色で雌しべが6~9本あるのが雌花。 雌花より小さい薄紫色の花が雄花。 

雌雄同株で雌雄異花です。 

よくよく見れば、なんとまあ美しい造りであることかと感心します。 

写真のアケビは5葉、葉が3枚のミツバアケビもよく見かけます。

 

若芽や実は食用に、茎は漢方に、ツルは籠を編む材料にとアケビは捨てるところがありません。もちろん染料としても使います。

 


 

 3月の染料植物 

カナメモチ(要黐)

 

モチノキ科と思っていたらバラ科です。どうりで赤味の色が染まるのはバラ科の植物によくあることです。

 

 

家の生垣によく使われており、いつもは目立たないのに、春先に真っ赤な新芽が出ると「おお!、そこにいたか」と驚くばかりのツヤツヤ美しい赤です。

 

別名アカメモチとも言います。 園芸品種として赤味の強い「レッドロビン」が多く見られますが、写真の葉には鋸歯がありますので、レッドロビンではないようです。

 

 

この赤い色の正体はアントシアニン系の色素です。 

カナメモチに限らず新芽が赤くなる植物は多く見かけますが、その理由についてはまだよく分かっていないようです。 強い紫外線を避けるためとも、赤色が見にくい動物の食害から身を守るためとも言われています。 

 

植物の生き残り戦略は巧妙、緻密、奥深く思慮深い。 


 

 2月の染料植物 

シロダモ(白だも)

 

 

 

 

珍しく漢字名がありません。 

同じクスノキ科のタブノキの「タブ」から転じたという説があるようです。 

アオダモ、ヤチダモなどはモクセイ科の植物で似て非なる植物です。

 

 

 

 

 

 

 

温暖な伊豆半島にはクスノキ科の植物が豊かに成育していて、シロダモもわが家の近辺にたくさん自生しています。 

秋に咲いた花が実るのは翌年の秋というスローペースで、赤く実る頃にはちょうど花が咲くので、花と実を同時に見ることのできるのが特徴です。

 

 

 

クスノキ科の植物は煮出していると特有の樟脳の匂いがして、爽やかです。

 


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 1月の染料植物 

イヌガヤ(犬榧)

 

わが家にも大きな木があります。 雌雄異株。 

わが家のイヌガヤは雌木で実もよく生り、落ちた実の実生苗が山ほど生えてきて困るので、かなり邪険に扱っております。 

 

 

 

切っても切っても勢いよく新芽を伸ばすので、染めに使ってみたところ意外によく染まり色調も美しい。 

同じ仲間のイチイは赤味の美しい色を染めることができるので、似ているのかもしれません。

 

 

 

実の季節はすでに終わっていますが、一つ二つ熟しきれない実が残っていました。

 

熟すと紫褐色になります。

 

 


 

 12月の染料植物 

マンリョウ(万両)

 

この季節、花屋さんの店先に多く並ぶマンリョウ。 

センリョウとともにお正月の縁起物として有名です。 

わが家の近辺にはたくさん自生し、鳥のおかげであちこちに芽を出します。

 

 

マンリョウ(万両)センリョウ(千両)、百両はカラタチバナのこと。十両がヤブコウジです。 ヤブコウジは10cm足らずの大きさながら地面を覆うように増えていってポツポツと付ける赤い実も美しく、わが家にもたくさん自生しています。 

冬枯れの森の中でそこだけポッ火がともったような赤い実を見つけると気持ちもほんのり明るくなるような気がします。 

一両はアリドウシのことというのは初めて知りました。

 

赤い実で染まりそうに思いますが、染めには枝葉を使います。


 

 11月の染料植物 

 

ヒイラギ(柊)

 

キンモクセイと同じモクセイ科です。色は違いますが、花はよく似ていて、キンモクセイほどではないものの爽やかで控えめな上品な香りがします。

 

家の表鬼門にはヒイラギを、裏鬼門にはナンテンを植えたものです。 

西洋でもセイヨウヒイラギはキリスト教と深い関わりがあります。こちらはモチノキ科ですが。

 

 

 

 

写真のヒイラギは立派な大木で、これくらいになるとヒイラギ特有のトゲのある葉は丸くなっています。 人間もそうありたいものです。

 

常緑樹全般、葉の充実する秋から冬は染めに適した時期です。

 


 

 10月の染料植物 

 

セイタカアワダチソウ

(背高泡立草)

 

子供の頃は河原や空き地一面のセイタカアワダチソウをよく見かけたものですが、最近ではむしろ珍しくなりました。

 

 

 

 

明治時代に持ち込まれた帰化植物です。 ほかの植物の成長を抑える成分を放出するため、河原のススキは一気になくなりセイタカアワダチソウに占有されてしまった時代もありましたが、その成分もある濃度を超えれば自分自身に返ってきて、自家中毒して減少していくという道をたどるようです。

 

 

 

麻布の草木染を専門にしていた今は亡き熊本の友がセイタカアワダチソウで染めたコースターです。 

 

着物を織る糸染めのため、私自身はなるべく帰化植物を染めに使わないようにしてきましたが、この色を見て目を見張りました。 

 

 

 

写真ではうまく色が拾えていないのが残念です。

 

 

 

 

 

草木染は誰にでもできるのですが、誰にでも美しい色が染まるわけではありません。 全く同じ染材、全く同じ条件で染めても人によって違いの出るのが面白いところです。 

 

彼女の染めは大好きで、今なお私は日々の生活の中で愛用しています。

 

 


 

 9月の染料植物 

ミカン(蜜柑)

 

わが家のミカン、多分温州です。 ほんのり色づいてきました。 

 

定期的に剪定するので、それを利用して染にも使います。 あまりよくは染まりませんが、煮出しをしていても爽やかな香りがして楽しい染めです。

 

 

もちろん<実は食べられますが、熟した黄色い皮を乾燥して細かくしたものが生薬「陳皮」でして、使い道は多岐、重宝します。

とりわけ自宅で生ったものは無農薬ですので、無駄にすることなく使います。 陳皮を染めに使うこともできます。

 

 

 

ついでに摘果しました。

意外に実入りが良かったので、ミカンシロップを仕込みました。この時期のものは苦みも酸味もあって、とても美味しいシロップになります。

 

 


 

 8月の染料植物 

マツカゼソウ(松風草)

 

嫋やかで涼しげな風情のマツカゼソウは伊豆の至る所でよく見かけます。3回3出羽状複葉が互生、というとややこしいですが、美しく手入れされた松が交互に枝を差し出したような端正さ。名前の由来もどうやらそんなところから来たようです。

 

日本では唯一の草本のミカン科植物です。 

とてもミカンと同じ科の植物とは思えませんが、葉をちぎってみるとその理由が分かります。 生薬名を「臭節草」と言いミカン科特有の匂いがします。 この弱々し気な草からは想像できない強い匂いで臭いという人もいますが、私はいい匂いと感じます。

 

私は漢方薬としてよりも、乾燥した葉を箪笥の引き出しに入れておくと虫よけになると聞いていました。

 

鹿の食害が深刻な天城の林床、林縁にもたくさん生えて群落を作っていますが、どうやら鹿はこの臭いを嫌って食べないようです。 天城はそのうち鹿の食べないアセビやマツカゼソウ、トゲのあるメギやサンショウだけになってしまうのではないかと心配になります。

 


イヌビワの実
イヌビワの実

 

 7月の染料植物 

イヌビワ(犬枇杷)

 

 

伊豆に住まうようになって初めて見た植物のひとつ、「イヌビワ」です。 

 

ビワというもののイチジクの仲間です。 親指大の実が生りますが、切ってみれば納得の小型イチジクです。

こちらはイチジクの実
こちらはイチジクの実

 

イヌビワは知れば知るほど面白い植物です。春から夏にかけて花も咲かずにいきなり枝に実が出現します。  

 

イチジクの仲間は「無花果」と書くように、まさに花がありません。 

これは見た目だけの話で、この実こそが花、「花嚢(かのう)」といいます。 私たちが通常目にしている花はガクがあって花弁があって、雌しべと雄しべがありますが、イチジクの仲間の花はこれらすべてがクルリと包みこまれてしまって、言ってみればリパーシブル、内側で咲いているというわけです。

 

そんなイヌビワが、風に頼らず通りすがりに訪れる虫もいないのにどうやって受粉をするかというと、イヌビワ専属の「イヌビワコバチ」が独占的に請け負っています。 

イヌビワは雌雄異株です。 雌株は花嚢の中に雌花のみを付けますが、雄株は花嚢の中に雄花と雌花を付けます。 

雄株でも雌花を持つことが面白いところです。

 

イヌビワコバチのメスはイヌビワのてっぺんの小さな穴から中に入り、種子植物の種となる「胚珠」に卵を産み付けますが、雌花嚢か雄花嚢か区別のつかないメスは雌花嚢の中にも入っていきます。 

 

イヌビワにとってみれば子孫を残す大切な胚珠に卵を産み付けられては困るので、雌花の中の胚珠は柱頭が長くなっていてメスの産卵管が届かないようにガッチリガードされています。 産卵管の届くのは雄花嚢の中の雌花の胚珠だけなのです。 うまくできていますね。 雄花嚢の雌花からは種子はできませんが、イヌビワコバチに産卵させるための見せかけに過ぎないということです。

 

 

 

さて、雄花の中に産み付けられた卵は秋には幼虫となり雄花嚢の中で越冬します。

翌年の夏にメスより少し早く羽化したオスは羽化間もないまだ動けないメスと交尾し、その後メスは外に出て行きます。 この時てっぺんの出口近くに雄花の出した花粉をつけて飛び去るという訳です。 雄株の花嚢に入ったメスは産卵しますが、雌株の花嚢に入ったメスは産卵はできずにジタバタ暴れて花粉を雌花に付けます。 

こうしてイヌビワの受粉完了です。

 

一方、オスは羽化と言っても翅を持たず、一生を雄花嚢の中で終えます。なんだかかわいそうな気もします。

 

イヌビワは雄花嚢をイヌビワコバチに専属で提供し、その代わりイヌビワコバチは雌花嚢の受粉を請け負うという一対一の切っても切れない共生関係が成り立っています。 

イチジク属はおよそ700種あるといわれ、それぞれに専属の共生パートナーがいるそうで実に驚きです。

 

染料の話はすっかりそっちのけとなりました。 

身近で豊富に採取できますし、タンニン分も多くもちろん染めにも使いますが、それよりも是非一度ジャムを作ってみたいものだと夢見ています。 

雄花嚢と雌花嚢はほとんど見分けがつきません。 雄花嚢は幼虫の虫えいですので食べることはできませんし、ちょっと遠慮したいですね。

越冬しているのは雄花嚢ですし、冬を迎える前に紫褐色に色づいているのが雌花嚢です。

これがジャムにできるのですが、いまだ叶っていません。

 


 

 6月の染料植物 

  ハリギリ(針桐)

 

大きな木だと20mは超えると思われるものを天城ではよく見かけます。 

新芽の時期の枝はその名のとおりトゲだらけで、タラの芽やコシアブラなどと同様にウコギ科で食べることもできます。 

いつもタラの芽と間違えますが、トゲはハリギリの方が鋭いでしょうか。 葉が展開してしまえば一目瞭然です。

ヤツデとよく似た葉をしていて、花もまたよく似ています。

 

染料として使われたという資料を見たことはありませんが、医食同源≒衣食同源。食べられるものは染料としても使います。 

あまり染まりませんが、、その成分は去痰作用があるとのことです。


 

 5月の染料植物 

ミズキ

 

その名のとおり新芽の時期に切ると水を吹くほどといいます。 

 

「ミズキ」と言うと大方の人が「ハナミズキ」を連想することと思います。 

ハナミズキは花の美しさから街路樹にしきりに用いられますが、同じミズキ科ミズキ属ながら随分と印象が違います。

 

 

 

 

 

伊豆の山地にはたくさん自生しており、ハナミズキに比べると一つ一つの花がとても小さく地味な集合花ですが、扇を放射状に広げたように枝を張り空に向かって真白な花が咲く姿は遠くからでもよく目につきますし、ことに夕暮れ時などその真白な花がポッ、ポッと浮かび上がる様子は何とも美しいのです。

 

 

よく似た「クマノミズキ」は開花期が少し遅く、同時に咲いたらとても見分けがつきません。 

わずかな差はミズキの葉が互生、クマノミズキは対生であること。 

遠目に見た樹形が整然としているのがミズキ、クマノミズキはやや雑然とした姿をしています。

 

 

いずれも私は染料としてはよく使います。 

どちらかと言えばクマノミズキの方が染め付きが良いようにも思います。

 


 

 4月の染料植物 

ローズマリー

 

私が東京に出てきた頃、小さなポット苗のローズマリーを買いました。 

かれこれ樹齢30年です。 

 

 

 

 

 

 

もともと雨の少ない地中海の乾燥地が原産地ですので、熱海に住まいを移してから、軒下の直接雨がかからないところに地植えしました。 

激しい雨や風の強い時に降り込む程度で、自慢にはなりませんが私がお水をあげたことはありません。 

そんな放任主義のわが家ながら、根元から株立ちし、根元の幹の直径は15cmほどあります。 かなり老木になりましたが、少し強めに切り戻しても春になるとすくすく瑞々しい新芽を出します。

 

 

ローズマリーは「若返りのハーブ」とか記憶力が良くなるとも言われます。 

通りがかりに服が触れただけで爽やかな香りが立ちます。 

 

幸い惜しみなく使えるほどの大株なので、ハーブティー、パスタ、魚料理、ベーコンの塩漬け、オイルやビネガー漬け、部屋にそのままつるしておくこともあります。 

 

お風呂のお湯を張る時に一枝入れるのも好きですし、来客の前に入口の階段にローズマリーの葉を撒いておくこともあります。 踏むと香りが立ち上ります。私の大好きな使い方です。

 

 

タンニン>分が含まれているので染料としても使います。 煮出しをしていると家中香りが立ちこめて、それはそれは気分もいいのですが、クロモジと同様油分が多いため、染めむらになりやすいのが難点です。

 

 


 

 3月の染料植物 

アカガシ(赤樫)

 

ブナ科コナラ属の常緑広葉樹で、コナラ属の中では珍しく葉に鋸歯がなく全縁です。 

温暖な伊豆半島の森では多く見かけます。 

 

わが家にも数本自生しています。樹齢700年とも言われる函南原生林の大アカガシの巨木は、すでに植物の域を脱し、精霊樹感さえあるほどの立派さです。

 

常緑樹の染めは3月が限度でしょうか。 常緑樹の葉は秋から冬にかけてが成熟の時で染色に適しており、春になると古い葉を大量に落とします。 

アカガシの落ち葉はツルツルしていて、山歩きをしていると厚く積もったアカガシの落ち葉の斜面が滑って登れないことがあります。

 


 

 2月の染料植物 

マンサク(満作)

 

早春に「先ず咲く」というのが、名の由来とも言います。 何とも変わった造形で、私は子供の頃のピロピロ笛を思い出します。 

昔は今とは違って紙風船と同じような紙で作られていたと思います。 

そのシワシワ加減がよく似ています。

 

 

マンサクは鮮やかな黄色の花が圧倒的に多いと思いますが、わが家のマンサクは珍しく咲いてみたら赤花でした。 

いずれも赤の色素を持っており、染めてみると赤味の茶色が染まります。 

黄花のマンサクでもあまり変わりはないと思います。

 

 

 

紅梅の梅の枝で染めると赤味が強いのかどうか試してみたことがありましたが、白梅とあまり違いはありませんでした。 

ただ、太い幹の心材を使うと幾分か違うようです。 

マンサクも同じでしょうか。

 


 

 1月の染料植物 

ヤツデ(八手)

 

知らない人はいないと思われるヤツデ。 

子供の頃にはどこの家の庭にも植わっていたような記憶があります。 

日陰でもよく育ち、大きな掌の形の葉は「福を招く」縁起の良い植物、あるいは天狗の団扇、「魔よけ」と聞かされてきました。

 

 

わが家の裏庭にも植えたわけでもないのに、あちこちから芽を出して割と早く大きくなるので、染料としてはよく染まるとは言えませんが、大きな葉は惜しみなく使えます。

 

 

いつも山歩きを共にする植物好きの友は、ある日のこと「ヤツデの葉っぱは何枚(何裂)か知ってる?」と聞きました。 

 

当然のように8枚と答えましたが、実ははぼ7枚、9枚という奇数裂だというのです。 

 

 

早速確かめたところなるほどでした。当たり前に思って疑わないことの盲点ですね。

 

 

 

花の少ないこの季節にウコギ科特有の放射状に広がる花を付けます。 

 

 

葉にはサポニンが含まれているので毒にも薬にもなります。 

かつて汲み取り便所の多かった時代には、近くに植えられて、蛆殺しに使われたと聞きます。 

 

また一方で、咳止め去痰のために乾燥した葉を煎じ薬として用いてきました。


 

 12月の染料植物 

ミツマタ(三椏)

 

冬の天城を歩いていると、スギやヒノキの人工林の林内に下向きに大きく蕾を膨らませたミツマタが点々と見られます。 

 

 

現在でも紙幣の原料として使われているそうですが、ほとんどが輸入のようです。

採算が合わず植えられたものが野生化したものでしょう。 

ミツマタと同様に古くから高級和紙の雁皮紙の原料として使われてきたガンピ(雁皮)も、ともに同じジンチョウゲ科というのが面白いところです。

 

20年ほど前でしょうか。 確か浄蓮の滝の近く、湯ヶ島だったと記憶していますが、友人と手漉き和紙の工房を訪ねたことがありました。 

原料となるミツマタもたくさん水に晒してありました。 

今、山歩きで湯ヶ島はよく訪れますが、いったいどこだったのか・・・・・ まったく思い出せないのが残念です。

 

染料としては若葉を使いますが、冬の枝も是非一度染めてみたいものです。

 


 

 11月の染料植物 

コナラ(小楢)

 

伊豆の里山にはコナラをよく見かけます。自然の植生かと思っていましたら、どうやら違うようです。 

 

 

 

 

 

昔からコナラは薪やシイタケの榾木として人の生活に深く結びつき、特に江戸と近い伊豆半島は一大薪供給地であったために、たくさん植えられてきたようです。

 

 

 

 

 

 

染料としても樹皮、枝葉、ドングリ、すべて使うことができ、身近にあるので染めたい時にいつでも手に入ります。

 

 

 

 

 

 

もう少し寒くなり12月の声を聞くようになると黄金色に色づき、それはそれは華やかで美しく、風の強い日に黄金の葉を一斉に空に舞い上げ、終盤を迎えます。 

 

もうすぐですね。

 

 

 

 

 

 

 

今朝のウオーキングの時にヤママユガの繭を見つけました。 

コナラが落葉すると一緒の落ちていることがあります。 

この季節ならではの枯葉の贈り物です。

 

 


NEW!

 10月の染料植物 

イタヤカエデ

 

天城を歩くと、イタヤカエデがたくさん自生していまが、わが家の近くで一本だけ自生しているイタヤカエデを見つけました。

 

 

 

カナダの「サトウカエデ」から採れるメープルシロップほどの糖度はないものの、イタヤカエデからもシロップが採れるそうです。 もちろん染料としても使えます。 

葉を乾燥して保存もでき、黒染めに使えますし、生葉で染めることもできます。

 

 

 

紅葉の美しいイロハモミジが庭木として植えられるのはわかりますが、、私なら断然イタヤカエデです。


 9月の染料植物 

ススキ(芒、薄)

 

ひと際暑く長い夏もようやく終わり、このところ涼しい日が続きすっかり秋らしくなりました。 

ススキの花穂も出始めました。

 

 

イネ科の植物で昔からよく使われてきたのは、カリヤス(刈安)とコブナグサ(小鮒草)です。 

カリヤスは伊吹刈安とも言われ、この辺りには生育しませんので染料店で乾燥したものを買うしかありません。 

コブナグサはわが家にもありますが、染めに使うほどの群落にはなってはいません。

 

 

一方で、ススキは至る所にふんだんにあって、ケチケチせずにたっぷり使うことができます。 あまりよく染まるとは言えませんが、秋らしい色合いです。 

 

身近に自生している植物を生活の中で自然に利用すればいいと思います。 

染めたいからとわざわざ遠方まで採りに行くようなことはすっかりなくなりました。 

齢のせいもありますか・・・・。


 

 8月の染料植物 

ムクゲ(木槿)

 

アオイ科フヨウ属、韓国の国花でもあります。 

チマチョゴリを思わせるふんわり美しい花です。 

 

同じ仲間のフヨウは花はそっくりですが、葉の形と樹形で見分けがつきます。 

ムクゲは真直ぐ伸び、フヨウは2~3mのこんもりとした株立ちの樹形になります。 

次々に絶えることなく咲いて、子供の頃の夏休みにはずっと咲いていたように記憶していますが、一日花です。 

 

写経用の紙をフヨウで染めたという古い記録があるものの、試してみたところムクゲもフヨウもあまりよく染まる染材ではありませんでした。


 

 7月の染料植物 

クチナシ(梔子)

 

子供の頃によく見かけた一重のクチナシを目にすることはめっきりなくなりました。 

大輪のまるでバラのような園芸種が増えました。

 

 

クチナシの香りは強く、その香りで咲き始めたことが分かります。 秋のキンモクセイと同じです。 香りは一重の方が強いように思います。

 

 

 

 

 

赤く熟した実を使い、古くから赤味の黄色を染める染料として使われてきました。 

衝羽根のような形をしていて、お料理の色付けにも使うのでご存知の方も多いと思います。 栗きんとんや、お新香の色付け、ご飯の色付けにも使われています。

 

 

 

おまけ

朝のウオーキングの時にカラスウリに花を見かけました。 夕方から咲き始めて朝にはつぼんでしまうので,なかなかお目にかかれません。 

 

夕闇の中にポッと白いレースを纏った花はとても幻想的です。


蓮着寺の大ヤマモモ
蓮着寺の大ヤマモモ

 

 6月の染料植物 

ヤマモモ(楊梅)

 

ヤマモモは古くから使われてきた染料で、染料名は渋木と言います。 庭木としてもよく植えられていますが、温暖な伊豆の照葉樹林帯には自生種の驚くほどの大木がたくさんあります。

 

染めには樹皮を使います。

 

 

染めもさることながら、ヤマモモの実もとても美味しいですね。 

ずいぶんと色づいてきました。


 

 5月の染料植物 

ムラサキシキブ

 

熱海に引っ越すまでは、庭木によく植えられ、こじんまりと株立ちしてたわわに紫色の実を付けるものをムラサキシキブと思っていました。 

 

実はこの庭木に使われているのは「コムラサキ」で園芸用に作られたもののようです。

 

 

 

 

 

 

熱海で本家・ムラサキシキブを見た時は少し驚きました。

3m~5mくらいのかなり大きな木になります。 

実はコムラサキのようにビッシリと付かず、少し大きめの実がまばらに付きます。 

葉を落としてからも冬枯れの森で紫の実が残っているのはよく見かけます。

 

 たくさん生えているのでやはり熱海に来てから初めて染めた植物です。 

 

染料としての堅牢度は判らない部分もありますが、私は「地産地消」ならぬ「地生地染」が一番ではないかと感じています。

 

得難い色に憧れて、その土地には育たない植物を入手して染めたとしても本来の色には染まりません。

 

 

 

以前、ウコンを育てて染めたことがありました。ウコンは南の方が自生地です。 

 

もちろん染まりはしますが、ウコンの育つ陽の光の下で染めて干さないと本来の色は出ないばかりか、褪色も激しいのを実感しました。

 

以来、その土地と陽の光の下で育った植物で染めることにしています。 

その方が自然ですし、簡単です。

 

 


 

 4月の染料植物 

カリン(花梨)

 

カリンの可愛らしい花が咲き始めました。 

 

春はバラ科の植物のオンパレードです。

カリンもバラ科特有の美しい赤味の色を染めることができます。 染めには剪定した枝葉を使いますが、落葉樹なので葉の成熟する夏の終わりから秋にかけてが一番かと思います。

 

ゴツゴツしたカチンカチンの黄色い実はご存知の方も多いことと思います。 

昔から咳止め、喉に効くと言われ、私も果実酒を常備しています。 

 

ジャムにするには固いので向かないかと思うと、さにあらず。 切るのに難儀をしますが、香りが高く染めた時と同じきれいな赤い美味しいジャムができます。

 


 

 3月の染料植物 

イタドリ(虎杖)

 

どうして「虎杖」と書くのか、ずっと不思議に思いながらも改めて調べることなく過ごしてきてしまいました。 

やっと真面目に調べてみたところ「痛みを取る」が転じて「イタドリ」となり「虎杖」は漢方薬の「虎杖根(こじょうこん)」からそのまま当て字として使われたようです。

 

染めにはその根を使いますが、なかなか美しい黄色が染まります。 

染料としても優良ですが、私は若いまだ赤味のある芽吹いたばかりのイタドリでジャムを作るのを楽しみとしています。 

タデ科の植物なのでシュウ酸を含み食べすぎ注意ですが、酸味があって野趣豊かなジャムになります。

 


 

 2月の染料植物 

フキ(蕗)

 

アクが強いので染まるだろうとは思っていましたが、想像以上によく染まります。

 

4月になってフキが出回る頃になると葉も大きくなります。 

葉も佃煮にして食べますが、毎度毎度は飽きてしまいますので、染めに使います。

 

今年は寒かったせいか、フキノトウも少し遅めの気がします。 

早春のフキノトウで染めてみたいとは思いはしますが、いまだ叶わず先に口に入ってしまいます。 この美味しさは格別です。


 

 1月の染料植物 

ヒイラギナンテン(柊南天)

 

ヒイラギののような葉にナンテンのような姿。 

似ているような似てないような。 

ナンテン同様メギ科の植物ですが、花はナンテンは梅雨時、ヒイラギナンテンはちょうど今頃蕾を付けています。 花の色は黄緑色で、ご存じない方も多いのですが、是非顔を近づけてみて下さい。早春にふさわしい爽やかな芳香です。

 

花自体はメギ(目木)とよく似ています。 メギは別名コトリトマラズ、ヘビノボラズというように、トゲトゲで鹿の食害の激しい天城の森で生き残っている植物の一つです。

 

ヒイラギナンテンは枝葉を煮出して使います。 

その花を思わせる青味がかった黄色を染めます。