7月の染料植物 

ゼンマイ(薇)   2017年

 

春、時計のゼンマイのようにクルクル巻いた若芽を出します。 

お馴染みの山菜・ゼンマイです。

 

食べても美味しいですが、夏の良く育った葉もよく染まる染材です。 

春の若芽の時と夏の成熟した姿とはずいぶん違います。

 

 

春の若芽の芽生えの時には赤茶色の綿毛を被っていて、食べる時はこの綿毛を取り除きます。この綿毛は綿花や白鳥の羽などと一緒に紡いで「ゼンマイ糸」が作られていました。 

今も東北の方では作られる方がいると聞きますが、いわゆる「ゼンマイ紬」もほぼ絶滅危惧種になってしまいました。

 

昔の人は何でも無駄にせず利用していたのですね。 

ゼンマイの綿毛には防虫、防カビ、防水の効果があるそうですが、若芽を守るためにすっぽり被った綿毛の役割はまさにそれなのだと納得します。

 


 

 7月の染料植物 ● 2016年

 

マツヨイグサ(待宵草)

 

最近あまり見かけなくなりました。 

 

別名、宵待草とか月見草とか呼ばれ、子供の頃は夏になると、河原や空き地には必ず群れ咲いていました。

 

夏の宵の気怠さと懐かしい景色とともに思い出す花になりました。

 

意外にもよく染まりますが、染液はトロリと粘り、染めむらができやすいので注意が必要です。 

鉄媒染で紫がかった藤鼠が染まります。

 

 

<C-4>

縞着尺

一本独鈷


 

7月の染料植物 ● No.2 2015年

 

ネムノキがふんわりと霞むように薄紅の花を付け始めるのは6月に入ってからです。

この花が咲くと蛍が飛び始めるよ、とよく聞かされたものですが、蛍が身近に見られなくなってずいぶんと久しくなりました。

懐かしい思い出に満ちた花でもありますが、実際には繁殖力の強いマメ科らしくかなりの大木になります。

 

ネムノキ(合歓の木)
ネムノキ(合歓の木)



その名の由来である、夜に葉を閉じるところは、残念ながら見たことがありません。


染料としては、この花からは想像がつきませんが、青味の黄色が染められます。


月光のような少し冷たい、涼やかな黄色と言ったらいいかもしれません。


ヤブマオ(藪苧麻)
ヤブマオ(藪苧麻)

 

7月の染料植物 ● No.1 2015年

 

イラクサ科カラムシ属の仲間は山野の至る所に繁茂していて、ちょうど花穂が出始め、染めに適した季節です。

 

風媒花のため、マルバアカソ、コアカソ、クサマオ、オニヤブマオ、メヤブマオ・・・と雑種や変種も多く、なかなか見分けが難しい植物です。

 

 

勢いの強いノマオ(野真麻)やヤブマオ(藪苧麻)に比べると、アカソ(赤麻)は葉も小ぶりで茎が赤く、花穂も赤味を帯びています。湿った日陰ぎみの土地や沢沿いに多いようです。


ノマオは栽培種をカラムシと言い。カラムシ織に使われる糸をこの草の茎から作ります。

葉の裏が白いので見分けることができます。

ノマオ(野真麻)
ノマオ(野真麻)

ラセイタソウ(羅背板草)
ラセイタソウ(羅背板草)

 

 

 

その他、葉がちりめんのように縮れているのが特徴のラセイタソウは海岸性で、熱海で初めて見たものです。

 

 

染めに使ったという話は聞いたことはありませんが、同じく海岸近くに多く見られるのはヤナギイチゴです。

こちらはイチゴと言ってもバラ科ではなくイラクサ科ヤナギイチゴ属です。

ヤナギイチゴ
ヤナギイチゴ


6月頃、茎にびっしりとオレンジ色の実を付けます。

バラ科のイチゴ程は美味しくありませんが、以前、東京の花屋さんで野イチゴの一種として売られていたのにはびっくりしました。



私は赤味の強い色に染まるのでアカソとヤブマオはよく使いますが、ラセイタソウは一度試してみたい植物です。