10月の染料植物 

クリ (栗)    2017年

 

山の先住民と競って食べた栗の実ももう終わりです。

 

クリは捨てるところがありません。

枝葉、樹皮、幹材、落花、イガ、鬼皮、渋皮、すべて染めに利用することのできる優れものです。

 

以前、初夏に咲く花の落花を集めて染めたことがありました。 

1度目の染めの後、染液が冷えるまで一晩置いた翌朝、染液に飛び込んだ虫がいっぱい浮いていてびっくりしたことがありました。 

煮出した染液もクリの花のむせ返るような甘い香りが立ち込めて、虫たちは勘違いしたのでしょう。

 

また、栗の渋皮煮を作る時、渋を抜くために何度か茹でこぼしますが、この茹でこぼした液も捨てません。 紫味の美しい色が染まります。

 

 


 

 10月の染料植物 ● 2016年

 

ソヨゴ(冬青)

 

草木染をする人ならば知らない人はいないでしょうが、「冬青」と書いて「ソヨゴ」と読みます。

どう転んでも読めませんね。 

 

長野、山梨には多いと聞きますし、富士吉田の友人宅の近くにも自生していました。 

この辺りでは見かけませんので、わが家には植木屋さんに植えてもらい、自給しています。

 

 

 

赤系統の色を染める染料は染ムラになることが多いので、煮出した染液は1晩置いて酸化させると赤味も増し、染ムラにもなりにくいのです。 

 

ソヨゴは、煮出しの時からさらに特殊です。 

 

私はたいてい8回まで煮出しを繰り返して染液を採りますが、1,2回目の煮出しの後、一晩おき、翌日に3.4回目の煮出し後にも一晩おき、さらに5,6回目、7,8回目も同じように繰り返して染液を採ります。 

 

煮出しだけで1週間かかります。

 

 

手間暇かけたソヨゴのくれる色は、美しい美しい赤です。 

華やかな紅でも朱でもなく、初老の女性にまとってほしい赤です。

 

 


 

10月の染料植物 ● 2015年

クサギ(臭木)


その名の通り、葉に特有のにおいがあります。

山野のあちこちに見かけますが、庭に植えるような木でもなく、あちこちにあることに注目するのは おそらく草木染めをする人だけだと思います。


5裂する赤いガクの真ん中にラピスラズリー色の実が付きます。この青い実を使います。

私はこの実を見ると、どうしてだか「星の王子様」を思い出します。

王子様は確か、このガクのような衿のついた服を着ていたように記憶しています。


藍を除いて唯一「水色〜青」を染めることができるので、草木染めを始めた人が必ずと言っていいほど、あこがれ、一度は染めてみたいと採集に出かけることと思います。


私も例外ではなく、9月の終わりごろから10月、11月上旬にかけて、十分な量になるまでセッセと採集して歩きました。

採集しては冷凍し、着物一反分の糸を染めるだけの量を集めるにはかなりの時間と労力が必要で、確か2年がかりで染めたと思います。

若い頃の染めですね。

今はちょっと無理かな・・・と感じます。


「藍は水の色、クサギは空の色」と聞いたことがあります。

まさに言い得て妙。

そうして染めた糸で織ったのが、紬織着物「半夏生」と網代文紬織着物「立夏」です。