天然酵母パン

 

時間もかかり、失敗も少なくない天然酵母パン作り。それでも是非!とお勧めするわけは、その豊かな美味しさにあります。

 

自然の中に存在する酵母菌は、イーストに比べるとそれほど力が強くありませんが、弱いからこそ、ゆっくりじっくり小麦粉の美味しさをとことん引き出してくれます。

 

この「ゆっくり、じっくり」こそが天然酵母パンの美味しさの秘密です。さらに、発酵の過程を楽しみながら「ゆっくり」過ごす時間もまた、心のごちそうです。

 

ホームベーカリーの力を借りると、手も汚さず気をつかう練りも発酵温度もお任せで作ることができます。

 

天然酵母パンを作るには、酵母液を水分として直接使うストレート法と、小麦粉と混ぜて中種を作る中種法があります。

酵母の力を強くして作る中種法の方が作りやすいでしょう。

 

3つのステップがあります。各ステップ毎に手順を説明します。


レーズン酵母液の作り方

天然酵母パンを作るのに欠かせないのが酵母液。 酵母は私たちの身の回りのあらゆるところに住んでいます。

その中でも、レーズンは簡単に手に入る上、発酵力も強くて天然酵母パンを作るには最適です。

目には見えない酵母菌ですが、レーズン酵母液を育ててみるとプクプク、シュワシュワ、元気な酵母の声が聞こえてきます。

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材料

(強力粉量250gのパンが2回焼ける分量)

 レーズン* :50g

 水*    :レーズンの倍量

 砂糖(ハチミツでも可)  :7.5g

 

準備するもの

 ビン

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①  きれいなビンにレーズンを入れる。レーズンの表には酵母菌がたくさん住んでいるので洗わない。

 

②  水を入れる。水はレーズンの倍の高さが目安*

 

③  砂糖を入れてよくかき混ぜる。

 

                                                             ④     呼吸をしているのでフタは載せるだけで締めない。

 

⑤  酵母の好む適温は28℃*。 たいていは常温で十分発酵する。真冬なら暖房機の近くに置いたり、季節によって置き場所を工夫する。

 

⑥  時々フタを開けて*ゆすりながら空気を入れる。

 

⑦  プクプクと泡立って、フタを開けるとシュワシュワと音がし、レーズンが浮き上がってきたら順調に発酵が進んでいる証拠。

 

 

⑧ レーズンが全部浮いて酵母液が白く濁り、ビンの底にうっすらと白い澱*のようなものがたまってきたら完成。そこで慌てずさらに1日置く。

 

⑨  フタをきっちり締めて冷蔵庫で保管する*

 


アドバイス

 

 レーズンはオイルコーティングしたものでも使えますが、できればノンオイルのものを。さらに、この酵母液で焼くせっかくの天然酵母パン。できれば有機栽培のレーズンをお勧めします。

 

 水は沸騰させてカルキ分を飛ばしたもの、お好きなミネラルウォーター、何でも可。水道水を使っても変わらずできます。

 

 人間と同じと考えればよいと思います。春秋は冷暖房がいらないので常温。夏はエアコン設定温度。冬は暖かな暖房機のそばです。

 

* この澱は酵母菌のかたまりです。使う時は液全体に回るようによく混ぜます。

 

  フタを開けて空気を入れる時に匂いを確認して下さい。順調ならば甘いレーズンの良い香りがしますが、腐敗臭やアルコール臭がしたら失敗です。

 

*  冷蔵庫で1か月ほど保存できます。

 

●  季節によって、出来上がりまでにはかかる日数は変わります。またレーズンの種類によっても違います。

 

●  出来上った酵母液を大さじ1杯ほど残しておいて、新たな酵母液を作る時に加えると発酵が早く進み、2度目からの酵母液作りは簡単になります。

こうすることで、酵母液を継ぎながら育てていくことができます。

 

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酵母液いろいろ

基本のレーズン酵母液以外にも、さまざまな酵母液ができます。

私のよく作る酵母液をご紹介します。作り方の基本はレーズン酵母液と同じです。

 

   桜の花の酵母液

①  桜の花*を摘んでビンにぎっちり入れる。

 

②  水と砂糖を入れて、フタを置く。

 

③  花が浮いてくるので、時々押し込むようにして水に浸かるようにする。

 

④     一日一回はフタを開けてビンをゆすり、空気を入れる。

泡がたくさん出てきて、底に白い澱がたまってきたら完成。発酵が進まないと感じたら少し砂糖を足す。


アドバイス

 

 八重桜が花弁が多く適しています。レーズン酵母ほど強くないのでなるべくたくさんの花を使います。

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          紅茶の酵母液

①  紅茶葉10g 水200㏄、砂糖15gくらい。

②  紅茶葉が全部浮き上がって、底に澱がたまってきたら完成。


アドバイス

 

●  酵母液のもとになったレーズン、桜の花、紅茶葉もすべてパンに練り込んで無駄なく食べられます。

 

●  その他、リンゴ、プチトマト、オレンジなどなど、いろいろな素材でできますので、是非挑戦して下さい。ハーブ類でもできます。


中種(元種)の作り方

作る前に必要な中種の分量を計算してから作りましょう。中種は発酵力を高めるために3度同じ発酵の作業を繰り返して作ります。作るパンの強力粉の使用量250gの例で考えてみましょう。このパンが2回焼ける分量の中種を作ってみます。

<例>

作るパンの強力粉の使用量     :250g

中種(強力粉の25%~30%):75g

パンを2回作るのに必要な中種

:75g×2=150g

 

50gずつ3回の発酵を繰り返すと、ちょうど150gになります。

そうすると

 

1回目      酵母液25g+強力粉25g*

2回目      酵母液25g+強力粉25g

3回目      酵母液25g+強力粉25g

 

このような段取りで作っていきます。

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     1回目の発酵
     1回目の発酵

①  1回目の発酵。

容器に分量のレーズン酵母液と強力粉を入れ、軽く混ぜ、フタを載せて、2倍に発酵するまで常温に置く。

 

2倍になったらフタを閉めて冷蔵庫で冷やす。

 

     2回目の発酵
     2回目の発酵

②  2回目の発酵。

1回目と同様の作業をする。

 

③     3回目の発酵。

2回目と同様の作業をする*

 


アドバイス

 

 少し余裕を見て、それぞれ27gずつにした方がいいかもしれません。あるいは2度目、3度目に調整してもいいです。

 

●  この作業は、繰り返していけばエンドレスで中種を継いでいくことができますが、回数を重ねるとレーズン酵母液の力も弱り、雑菌も繁殖しやすくなります。

2回もしくは3回パンを作れる分量の中種を起こしたら、また新たに作り直すという方が良いと思います。


天然酵母パンの作り方

 材料

  強力粉:250g

  中種 :75g

  水  :160㏄

  塩  :4.2g

  砂糖 :15g

  バター:15g

 

 準備するもの

  ホームベーカリー(=HB)*

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① パンケースにバター以外の材料を入れる。

*は季節によって温度を調整する。

 

② HBの練りコースを20分にセット。10分後に室温に戻しておいたバターを入れる。

具材を入れる場合は15分後に

 

 ③ 練りが終わったら一次発酵。乾燥しないようにラップをかぶせて、HBの中で常温発酵。

④ 2倍に膨らんだら、低速コースがあれば練り30秒でパンチする*

 

⑤ そのまま常温発酵。3.5~4倍で一次発酵終了*。 

5~7時間くらいかかる。冬はもう少し時間がかかる。

 

⑥ 練り30秒でパンチ

 

                ⑦  二次発酵。常温で2.5~3倍に発酵したら終了。HBの発酵低温設定で発酵させてもよい。

 ⑧  HB焼きコース45~50分


アドバイス

 

*  HBは練り、発酵、焼き、それぞれ独立モードが使えるものが、天然酵母パン作りには便利です。

 

  天然酵母が良く働くためには、使う材料は常温に戻しておきます。なかでも水温はとても重要です。特に冬は粉も温度がいっそう低い状態です。

おおむね目安にしているのは

夏 :5~10℃

春秋:20~25℃

冬 :25~30℃

冬の場合は室温も低いので、40℃くらいにすることもあります。ただし、それ以上は酵母が失活しますので気をつけて下さい。こう書くと、面倒で複雑なようですが、相手は生き物。自分と同じように心地よく動ける水温は?と考えれば、そのうちにコツがつかめてきます。

 

 2倍の時にパンチを入れずにそのまま⑤まで進んでも構いませんが、この時点でパンチを入れるとパンのもっちり感が違います。

 

 もっとも大切なのは一次発酵です。上手に作るコツは、必ず3.5~4倍まで発酵させることです。