●●● 9月の染料植物 ●●●
ヌルデ(白膠木)2017年
染料としては五倍子(ごばいし)、耳附子(みんぶし)として知られています。
ヌルデノミミフシアブラムシがヌルデに付いてできる耳のような虫こぶの事で、残念ながら私はヌルデの木に付いた実物の虫こぶを未だ見たことがありません。 ( ↓追記あり )
染料店で買うのが普通です。
植物に虫が付くと異常な成長をしてできるのが虫こぶです。
虫から身を守るための成分が多量に含まれるため、それを利用した漢方薬などもあります。 マタタビ酒に用いられるのも虫こぶのできた実の方で、虫こぶというのはなかなか興味深いものです。
五倍子には多くのタンニン分が含まれ、優秀な染料として古くから使われてきました。
鉄媒染をすると紫がかった鼠色が美しく色も堅牢です。
私はこの五倍子を煮出す時の強烈な臭いが苦手なため、ウルシ科なのでかぶれないよう10月に紅葉した葉を使っています。
< 追記 >
初めて見つけました五倍子。
耳附子と言った方がしっくりとします。
●●● 9月の
染料植物 ●●● 2016年
キンモクセイ
甘い香りが漂いは始めました。
秋です。
染料にするというより、花をホワイトリカーに漬け込んで、花酒を仕込むついでに剪定して染めます。
2007年に仕込んだお酒です。
1、2年は青臭いだけで、桂花陳酒には及びもつきませんでした。
ところがすっかり忘れていて、5、6年も経ったでしょうか。それはそれは薫り高く、まさに桂花陳酒です。
9年物の色は濃い琥珀色です。 あと少ししか残っていませんので、チビチビ大切に飲んでいます。
おもしろいことに同じ色相に染まります。
当たり前でもあります。
●●● 9月の染料植物 ●●● No.2
2015年
コブナグサ(小鮒草)
ススキのような花穂を出しているのが分かるでしょうか。
わずか2〜3cmの花穂、ヒョロヒョロと頼りなげですが、実に力強く青く澄んだ色をくれます。
黄八丈の黄色はこのコブナグサで染められています。
よく似たチヂミザサは自宅周辺にたくさん生えていて、あまりに似ていては菜穂が出ないとはっきりしない時もあります。
コブナグサは倒れた所から分枝しながら花穂を出し、地面を這うように伸びて行きます。
一方、チヂミザサは分枝せず、花穂の形状も違います。
(左/チヂミザサ 右/コブナグサ)
コブナグサの葉は茎をグルリと抱き込むように付き、細かい毛が密集していますが、チヂミザサは抱き込まず、無毛です。
2012年の秋、玄岳山頂の駐車場わきに一面のコブナグサの群生を見つけました。
玄岳は700m程の標高がありますので意外でした。
その後毎年チェックしていますが、今年もコブナグサを見つけることができませんでした。
何らかの環境が整ったところで、あのような群生ができるのかもしれません。
あるいはまたそのサイクルが廻って来る年があるかもしれないので、楽しみに待っています。
2012年に収穫したコブナグサで染めて織ったのが、2014年の風通織着物「清明」です。
青梅に住んでいた時に、やはり偶然見つけたコブナグサで染めて織ったのが2000年網代文紬織着物「公孫樹」です。
植物によっては染め重ねると色が濁るというか、冴えがなくなるものがありますが、コブナグサは染めを重ねるにしたがって深みと冴えを増すように感じます。
「清明」も「公孫樹」も2年にわたって染め重ねを繰り返しています。
写真のコブナグサは自宅で細々と育っているものです。
染めに使えるほどの大群落に育つことを夢見ていますが、ちょっと無理かもしれません。
どこかでコブナグサが波打つ群落にめぐり会いたいものです。
●●● 9月の染料植物 ●●● No.1 2015年
雨間をぬって山を一回りすると、すっかり秋の気配です。
キハギ、ヤマハギ、ススキにクズ。
いずれも染料として使います。
キハギ
ヤマハギ
クズ
秋の七草のひとつでもあるオミナエシ(女郎花)の自生はなかなか見られませんが、オトコエシ(男郎花)はよく見かけます。
ヤマハゼの紅葉も始まりました。
ウルシ科なので、緑葉の間はかぶれる怖れがありますので、紅葉した葉を染めに使います。
クロモジとキブシは早くも花芽を付けています。
3月に咲くのに随分と早い身支度です。
クロモジ
キブシ