9月1日(火)
富士山自然休養林
日本近海にはいくつかの台風やらその卵やらがウヨウヨしていて、どうやら明日からしばらくは雨模様のようです。
今日しかない、とばかりに富士山の裾野にやってきました。
須山上り登山道の左隣には、ほぼ並行してガラン沢に出る登山道があり、一合五勺のあたりから森に入ってガラン沢に出てみることにしました。
朽ちかけた道標があり「笹塚歩道(左回り)」と何とか読めます。 ここが笹塚歩道なのかどうかわかりませんが、今ではおそらく廃道になっているのでしょう。
緑は一段と濃く、頭上は樹々の天井、足元は一面の苔の絨毯が広がります。
ガラン沢に続く登山道に出て倒木帯、モミ林に入っていくとガラン沢に出ます。
ガラン沢はどういう意味なのでしょう。
ガレた崩落地帯だからでしょうか。
御殿庭入口から子天狗塚、三辻、四辻を経て二ツ塚上塚の麓までやってきました。
かろうじて裾が見えるのみ。
この広大な自然の中にポツンと一人きり、清々した気分であり少し怖くもあり、やはり来てよかったと思います。
バイケイソウの実: 今年も花の季節を逃してしまいました。
実ができています。
実も初めて。来年こそは花を見たいものです。
ヤハズヒゴタイ: 亜高山帯の植物で、富士山麓ではよく見かけます。
フジアザミ: ちょうど花の盛りを迎えて砂礫地に逞しく生きています。 下を向いているのは何か意味があるのでしょうか。
イズコゴメグサ: フォッサマグナ要素の植物で富士、箱根、伊豆地域の固有種であり絶滅危惧種でもあります。熱海でも見られるところがあり、大切にしたいものです。
ミヤマツチトチモチ: 下山途中の広葉樹林帯に入ったあたりで、久しぶりに再会しました。 数年前八丁池に行った折に出会った、なんとも奇妙な植物です。 一見、ツクシのようなキノコのような。 なんとこれでも双子葉植物だそうです。これは雌株で、雄株は未だ見つかっていないというのも面白いですね。
カエデ類の根に寄生しています。
今日見かけたところをぐるり見まわしてみるとオオイタヤメイゲツの大きな木が数本。
この季節になるとカエデ類の林床は注意しながら歩いてはいますが、なかなか出会うことができませんでしたので、今日は幸運でした。
水ケ塚まで帰り着いたところで、宝永山と雲に隠れがちながら山頂が今日やっと見ることができました。
8月17日(月) 河津大滝
天城峠から河津川沿いに河津七滝の大滝まではずっと下りで、真夏の一番暑い時でも涼しくて快適に歩くことのできる毎年夏の恒例ラクチン納涼コースです。
ところが今年はやっぱり暑過ぎるのか・・・ 全然涼しくありません。
一番標高の高い天城峠付近でも滝の近くでも宗太郎園地の杉並木の木陰でさえ下界と変わりません。
年々夏の暑さは過酷になってきています。このコースがこれほど暑いのはやはり異常。 オリンピックは延期になってよかったとさえ思えてきます。
河津川の源流から一番近い滝が二階滝、二番目が平滑ノ滝です。
その名のとおり大きな一枚岩の上を滑るように流れており、幅は25mほど、高さは4mほどです。水際まで行って冷たい水に触れることのできるのがとても気に入っています。
この下流の七滝は有名で観光客も多いのですが、平滑ノ滝は訪れる人もほとんどいません。
河津七滝は上流側、猿田淵から始まります。 観光客は下流の大滝側から登って来るのでここまで来る人はほぼ皆無。 川べりで腹ごしらえをしてから順々に下っていきます。
釜滝: 七滝の中でも一番ダイナミック。
しかし滝底の縁の遊歩道に続く橋が落ちてしまっています。今年の長雨のせいでしょうか。
湾曲しながら覆いかぶさるような柱状節理の岸壁とてっぺんから流れ落ちる滝は、お釜の底から見上げるのが一番です。
その先のエビ滝側からグルリ回り込んで行きました。
蛇滝:蛇滝の柱状節理も素晴らしい。
今年はさすがに外国人観光客の姿はありませんでしたが、初景滝まで来ると意外にも観光客が多く、暑さでマスクをしない人も多くて何だか落ち着かず、その先のカニ滝、出合滝、大滝はパスしました。
この暑さ、いつまで続くのでしょう。さすがにめげた納涼コースでした。
アケボノシュスラン: 平滑ノ滝は近くの水辺に数株。 花はまだですがここで見かけるとはうれしいですね。
マルミノヤマゴボウ: 一見すると外来種のようですが、意外にも在来種です。
滑沢渓谷でも見かけたことがあります。
どうやら北限地がナチシダと同じ付近のようで、ナチシダを見かけるところマルミノヤマゴボウありのようです。
エゴマ:シソ科ですので当たり前ですが、シソとそっくりです。 天城ではあちこちでよく群落を見かけます。
エゴマオイルは常用しているオイルで、わが家のニャンコも食べます。
割と高価なので、山でエゴマを見かけると油は採れないものかとついつい考えてしまいます。
未同定トカゲ : 幼体なのかもしれませんが体長5cm程の小ぶり。
普段目にするトカゲやカナヘビと違うので思わずシャッターを押しました。
逃げずにジッとしていてくれて、なかなかフォトジェニックです。
8月5日(水) 八丁池
50回目の八丁池です。
長雨だったためか、梅雨明けしてもすっきり晴れずに一重にも二重にも薄い水蒸気のペールがかかったような空で、八丁池は満タンです。
歩き始めたのは2014年も終わりに近い頃。
もともとインドア派の運動嫌いだったのに、いくら腰痛改善のためとはいえ、よく続いたものと我ながら感心しています。
とはいえ、嫌いなことは1㎜たりともしたくない性分なので、山歩きが好きになってしまったというだけの話なのですが。
同じところに50回。 特に記録好きでもありません。
何度歩いてもただの1度たりとも同じ景色、同じ草木、同じ空気だったためしはなく、いつも新鮮です。
定点観察中
アオフタバラン: 株の数が減ったような気がしますが、雨のせいでしょうか。
咲き始めました。
小さな目立たない花ですが、よく見れば面白い造形です。
ジンバイソウ: 花穂が伸びてきましたが、開花はあと少し。
ヤシャビシャク: 実がたくさん付いていますね。
今年はヒメシャラの花を逃したと思っていましたが、1100m越えたあたりから落花が見られました。
考えてみれば背の高いヒメシャラの木に花が咲いている姿はなかなか地上からは見られませんので、いつも落花を楽しんでいるわけです。
このところ股関節と膝関節の痛みが出ていて、おそらくはもともとの原因の腰椎から起因しているように感じています。
長雨とコロナ自粛の間にストレッチと軽い筋トレを続けたら、何とかだいじょうぶになってきました。
齢とともにわが身のメンテをし、だましだまし、懐柔しつつ、いつも美しく優しいブナとヒメシャラのこの森を100回目も元気で歩けたらと思います。
7月22日(水) 石仏の道
これほど雨の続く梅雨はあまり記憶にありませんし、3週間も山歩きができなかったのもやはり思い出せません。
一つは晴れ、もう一つは雨の天気予報でしたが、運動不足解消に思い切って出かけてきました。
東光寺から千歳川の源流沿いに奥湯河原に下りる道はもう一つの石仏の道です。
クサアジサイが咲き始めています。
思い切って来たのはこの花が見たかったからでもあります。
薄暗い林床で、花が咲かないととてもアジサイとは分からない、その名のとおり草のようなアジサイです。 普通のアジサイは葉が対生ですが、クサアジサイは互生です。
装飾花はまばらにつくようですが、3枚というのも特徴かもしれません。
ほかのアジサイは4枚だったり5枚だったり、園芸種では八重もあります。
水が地上に湧き出す辺りまで下りると、しばらく前から工事中だった熱海市の水道施設があり、ちょうどこの辺りに自生するアケボノシュスランが無くなってしまわないかと心配でしたがどうやら大丈夫。
花が咲くまでにはまだ2か月ほどかかりますが、また見に来ることにしましょう。
ウバユリ: 久々に花に出会いました。 花の咲く頃に葉(歯)が無くなる、というのでウバ(姥)ユリと名付けられたそうで、確かにユリとしては地味ではありますがなんだか気の毒。
年末近くになると売られるユリ根からどんな花が咲くのか確かめたくて、庭に植えてみたことがあります。咲いたのはオレンジ色に黒い点々があるユリでした。コオニユリだそうです。
ウバユリの根も食べられるそうで、一度は食べてみたいものです。
こちらはいつもの石仏の道。
奥湯河原側とは対照的に南側の海に開けた明るい草原の道です。
草原の花々は梅雨明け間近の顔ぶれです。
もういい加減明けてほしいものです。
7月2日(木) 岩戸山
昨日もよく降りました。確かに近年、異常な感じの降り方が多くなりました。
束の間の晴れです。
姫の沢も水が滔々と駆け下っており、いつもとは様子が随分と違ってすでに姫の川です。
山のあちこちから水が湧き出していますが、尾根筋に登ってしまえば大丈夫です。
東光寺はまだ靄の中。 樹々の向こう、ポッカリ見える入口がまるで異界の入口のようです。
岩戸山に着く頃には青空に青い海、初島に伊豆大島、東海岸の岬も見える。
途中、富士山もチラリ。
ツチアケビ:この奇妙な花に出会うことはなかなかありません。 去年も出会ったので幸運です。
蕾が多く花のピークはまだこれからだと思われますが、昨日までの雨で開花した花も傷んだ状態で少し残念です。
かつて腐生植物といわれた菌従属栄養植物です。その名の通り、菌に従属して栄養を得ているので光合成をするための葉を持ちません。まるで誰かいたずらに突き刺したかのようにいきなり土からニョッキリと花が出ているのです。
それにしてもまあまあ、奇妙奇天烈、不気味といえば不気味。
しかし、一つ一つの花はじっくり見ればまさしくランの美しい造形です。
ヤマジサイ: 園芸品種のアジサイは色も大きさも華やかさもとりどりですが、この野生の素朴で薄暗い沢筋に目の覚めるような白い萼のヤマアジサイはシンプルな美しさそのものです。
石膏のような少し重みがあって、少し冷たいような白です。
湯河原側に少し降りて確認してきました。
アマギツツジ: 天城付近以外では東光寺の近くに生育しているようです。
かろうじて散り残り1輪。
クサアジサイ: 蕾が上がってきました。あと1週間から10日くらいで開花するでしょうか。
石仏の道は春にきれいに草刈りがされましたが、もうすっかりススキの原です。
雨上がりのムッとするような夏草の波の中をゆっくり下ります。
夏の花たちはまだまだですが、初お目見えにも出会いました。
コキンバイザサ: 初お目見え。花弁があって萼があるのを典型的な花と普通は思っていますが、花弁と萼の見分けがつかない花もあります。
例えば、ユリは内側の3枚が花弁、外側の3枚が萼です。花弁と萼の見分けはつきません。
コキンバイザサも内側の3枚が花弁で外側3枚が萼です。
よく見ると外側3枚の萼の先端に毛が生えていますね。
カラカルという野生のネコがいますが、そのネコの耳のようです。
静岡県ではレッドデータの中の要注目種になっています。
草むらの中にへばりつくように生えており、花は極々小さくほとんど見過ごしてしまいますし、うっかり踏んづけてしまいます。
このような草原が少なくなってしまったことも危機の原因でしょう。
明日からまた雨模様のようです。山から下りてお風呂につかり、ほ~~っと一息、夕暮れ時にヒグラシの声。今夏の初音です。
6月24日(水)
梅雨の合間
飽きもせず再びまたやって来ました。
今日しかない!という梅雨の晴れ間にピカピカの富士山と宝永火口。 このところなかなか運がいい。
それでも富士山の姿が見えるのはたいてい朝のうちだけで、時間とともにどんどん雲がわいて富士山の周りに集まって姿を隠してしまいます。
今日は須山登山道から御殿庭、三辻、四辻を経て二ツ塚へとぐるり回ってみることにしました。
御殿庭下まで来ると五里霧中とはこのこと。
靄は生き物のようにうごめいて、ぬうっと何かが現れそうな雰囲気にゾクッとしますが、結構私は好きです。
イチヨウラン: 初めての遭遇! 名前のとおり葉っぱは一枚だけ。
靄の中の薄暗いカラマツ林の中に目立たずひっそりとではあるものの、スックと潔い姿。
このランに出会えただけで今日は200点です。
見惚れることしきりのあまり、腹ペコで二ツ塚の麓まで来た時には辺りは何も見えず、本日は登らず戻ることにしました。
ミヤマフタバラン: 花芽が上がってきています。 花柄の色が紫色で、葉の形は心形。ミヤマフタバランと思われます。
コフタバランは花柄が緑、葉の形が三角。 咲いてみないとはっきりとは分かりませんが。
ヒメハナワラビ: 下界で見かけるフユノハナワラビとは葉の形が違いますね。
標高2000m近く、こんなところに驚きです。
これも初お目見えです。
未同定2種。
ネバリノギラン?:以前見かけたあたりなのでおそらく間違いないとは思うものの、まだ花芽が上がってきたところで同定に至らず。
ギンラン?:こちらも花を見ないと分かりません。
ヤマクワガタの実: 花で見分けるもの、葉で見分けるもの、実で見分けるもの、いろいろありますが、ヤマクワガタは実を見ると分かりやすいいですね。
ヤマクワガタの実は菱形をした扇形。クワガタソウの実は三角形の扇形です。
ツルシロカネソウの実: ちょっとピンボケですが、プロペラのようなサバの尾のような実ができています。
実を見ればトウゴクサバノオと同じ仲間と分かります。
今日はバイケイソウの花を見るのが目的でしたが、全く咲いていませんでした。 その代わりイチヨウランを見ることができたし、未同定2種も宿題として残ったし。
また梅雨の晴れ間を狙って見に来ることにしましょう。
緊急事態宣言は解除されたといはいえ、ワクチンもなく、抗体を持つ人も少なく、危険な状態であることには変わりありません。
4月に入って以来、友人との山歩きもできずずっとソロの日々です。
それはそれなりに楽しく、こんな梅雨の晴れ間にエイヤッと出かけて来ることも一人だと思うままではあるのですが、今日のように素敵な花たちに出会うと、私と同様植物好きな友人にも見せてあげたくなります。
早くまた一緒に歩ける日が来ますように。
それまでいろいろ見ては貯金しておいて来年は一緒に来ましょう。
余談ながら。
出発点の水ケ塚公園に急速充電器が設置されてとても楽になりました。
例年ですとマイカー規制中は5合目までの車は乗り入れできませんがEVはエコカーなので規制外で走ることができます。
が、しかし。
充電設備がなかったため私の電池容量の少ないEVでは現実不可能でした。
これで行けるようになります。
来年、コロナがおさまったら是非5合目まで行ってみようと思います。
6月17日(水)
アマギツツジ
ようやくひとつ、ふたつ・・・ ちょっと早いかなあと思いながら来てみました。
水生地から尾根道を登ってほどなく、あまり標高の高くないところでやっと咲き始めたところです。
朱赤の大きな花。
季節に先駆けて咲くヤマツツジも同じような色ですが、アマギツツジはツツジの中でも最も遅い時期、6月の下旬から7月の上旬にかけてに咲き出します。
伊豆半島の固有種でトウゴクミツバツツジと同様、三つの大きな葉が特徴です。
尾根道を直登して2本の大ブナが居並ぶところに出れば上り御幸歩道に出た目印です。
今日もぴったり出ることができて、地図読み練習合格。
1070m付近の源流部:
1000mを越したあたりの森には川の源流部の涸沢があちこちに稲妻のように走っていますが、水が流れていました。
梅雨時で先週はよく降ったとはいえ、この辺りで水があるのは初めて見ました。
今日の八丁池です。
展望台からはずいぶんと雪が少なくなった富士山がうっすらと見えます。
モリアオガエルの鳴き声がしきりです。 水上にせり出した枝先に産み付けられた卵は孵化してオタマジャクシとなり水に落ちるのですが、その下で待ち構えているのがイモリです。イモリのお腹もプックリしているような。 自然は厳しい。
ジンバイソウ:定点観察中。 順調に成育中。
ヒメシャラ: 花はまだのようです。 ヒメシャラの樹形は十人十色。 捩れたり、寄りかかったり、話しかけているようだったり、どうして?というような格好をしており、しなやかでいながら歯切れのいいシャッキッとした風情がどっしりとしたブナとは対照的です。
帰路、視界の開けたところから長九郎山(左奥)と猿山(右奥)の山並みが見えました。 今年はコロナの影響もあり、どちらにも行けず、アマギシャクナゲは残念ながら見ることは出来ませんでした。 来年は平穏な日々が戻りますように。
6月10日(水) 再びの富士山自然休養林
今日明日にも梅雨入りしそうな雰囲気だったので、再びやって来ました。
何とこの時期には珍しいくらいの澄み渡った空にくっきり富士山!
来た甲斐大あり。
水ケ塚から見る富士山は山頂の手前に巨大な宝永火口がポッカリと口を開けた荒々しい姿で火山らしくて私はとても好きです。
今日も二ツ塚を目指しますが、前回と別ルートを歩きます。 ずいぶん緑が濃くなってなんて気持ちの良いこと。
シロバナノヘビイチゴの白い花に点々と縁どられた歩道をカラマツ林まで登って来ると息も上がってきます。
今日はここでも随分と暑いので下界はさぞや暑かろう・・・しきりに鳴いていたエゾハルゼミの声もここまで来るとカッコウにとって代わります。
樹々の隙間から見え隠れする宝永山とその向こうの山頂が早く見たくて三辻まで来ると樹林帯を抜けます。残念ながらすでには雲に隠れてしまいました。
富士山がきれいに見えるのはたいてい朝のうちで、時間とともに雲が集まってきます。
前回は二ツ塚の上塚に登ったので今日は下塚に登ってみます。
山頂から振り返ると草のパッチワークをちりばめたような上塚、その奥に宝永山、さらにその奥に山頂が三段重ねになって見えます。
このように見える場所は珍しいですね。
風の強い日で山頂の鳥居の陰に隠れてサッサとおにぎりを食べて退散。
下り坂の天気予報どおり、下塚を下りた頃には一気に霧が下りて来ました。
山頂付近では雨が降り始めているようで、吹き降ろす風に乗って細かな雨粒が吹き下りてくるようになりました。
御殿庭を回って帰るつもりでしたが、最短コースを選択。どうやら急いで下った方が良さそうです。
何とか降られずに水ケ塚まで戻って来ましたが、その直後からかなり降り始めてかろうじてセーフでした。
オンタデ: 早くも花が咲き始めた株がありました。
富士山の砂礫地の厳しくて短い夏、植物も大急ぎで成長しています。
イワセントウソウ; この繊細な花のどこにピントを合わせていいのか、最近の優秀なデジカメ泣かせの花ナンバーワンです。
まるで打ち上げ花火のようですね。
ツルシロカネソウの横にイワセントウソウも写り込みました。
ツルシロカネソウの花も1㎝足らずです。
放射状の花火の先に付く小さな花は1〜2㎜でしょう。 素晴らしい。
バイケイソウ: 蕾が上がって来ました。開花は来週あたりでしょうか。
梅雨の晴れ間を縫ってまた見に来ましょう。
5月28日(木)
富士山自然休養林
標高1400m余りの水ケ塚からブナやミズナラ、カエデ、ツツジ・・・・鬱蒼とした原生林の須山登山道を登って行きます。
足元には小さな可憐な花たち。
ツルシロカネソウ: あられをまき散らしたように白い花が足元一面広がります。踏まないように歩くのが難しいくらいです。
ワチガイソウ:初お目見え。
こんなに小さいとは思いませんでした。
こちらも今が盛り。
マイヅルソウ: ようやく一輪開花株を見つけました。
咲きそろうまでもう少しです。
シロバナノヘビイチゴとヘビイチゴ: 普通見かけるのは黄色いヘビイチゴですが、富士山の裾野には圧倒的にシロバナノヘビイチゴが多いです。
ムシカリ:
落花が可愛らしい。 装飾花は5枚ではなく5裂なのですね。
改めて納得。
トウゴクミツバツツジ: 雄しべが10本です。ミツバツツジはそっくりさんですが、雄しべは5本です。
今年は八丁池でもこの原生林でもたっぷり見ることができました。
高度が上がりウラジロモミやシラビソの林を過ぎると倒木地帯に入ってきます。美しいだけではない富士山の荒々しさと厳しさの顔が見えてきます。
さらに登れば新緑のカラマツ地帯に入り御殿庭までやって来ました。
ここから上は森林限界。
砂礫地となります。
御殿庭から少し下りつつ子天狗塚を経て二ツ塚へと向かいます。 見えてきましたね。
麓あたりまで来ると二ツ塚も随分と高く見えて、今日は登ろうか登るまいかと迷うところですが、上塚を目指します。 山頂はすぐ目の前にあるのに、ズルズル、ガレガレのスコリア丘は全く登りにくい。
雲は頂上に続く斜面をなめるように這い上っていき、宝永火口縁とその奥、富士山頂に続く雪の斜面がほんの束の間に見えるのに励まされながらよじ登っていきます。
やっぱり素晴らしい。富士山頂はなかなか姿を見せてはくれないけれど、一日中ここにいても飽きません。
こんな荒漠とした大地にもしっかり根付く花たち。
フジハタザオ
イワツメグサ
フジアザミ、オンタデ、イタドリはまだ新芽の時期です。
森林限界辺りの地衣類。
帰路、少し歩道から外れた谷合を埋め尽くすようなヤマシャクヤクの大きな群落に出会いました。純白で豪華なのに凛として高貴な花。 少し開き始めたところで、あと1日2日もすれば満開になりそうでした。
これほどの気品のあるヤマシャクヤクですが、秋にその実を見た時はあまりのギャップにびっくりしたことがあります。
まるで只今人を食べてきたかのような真っ赤な鬼の口のようで、絶世の美女のもう一つの顔でしょうか。
バイケイソウの大群落もあちこちにありました。バイケイソウは花が終わると跡形もなくなってしまうので、花の時期に訪れたいものです。来週、また来たくなってきました。