12月25日(金)
大室山 その1
訳あって大室山。
登山禁止だし、ツルッとしてススキばかりの山で木は無いし、植物観察もできないし、正直なところ興味の持てない山です。
山頂までリフトであっという間に着いてしまいます。火口をグルリと歩いてみれば、東西南北、絶景です。
いくつかある火山のタイプのうち、スコリア丘といわれる典型的な山の形。
遠くから見るとまさにプリン型ですが、すぐふもとの桜の里から見上げると、お椀を伏せたような なだらかできれいな山の形をしています。
この季節、よくよく山肌を見ると赤味を帯びた色や、枯葉色、緑を残した干草色、さまざま混じり合ってなかなかの風情です。
11月27日(金)
大平山から柏嶺へ
ずいぶんと寒さも増してきました。
温暖=伊豆とはいうものの、山間では雪が降ります。
山歩きも冬バージョン。
意外とおろそかにしている近場の山歩きを楽しもうと思います。
今回は、伊東の駅から歩いても30分ほどの丸山公園から出発します。
公園内を通って、大平山に続く尾根道を登って行きます。
大平山は標高600mに満たない低山ですが、侮る事なかれ。
山頂までは結構な上りが続きます。
風の強い日でしたが、林間はおだやか。
温暖な海岸近くの山地に多い落葉樹や照葉樹の雑木林は快適です。
サクラ、コナラ、シロダモ、イヌマキ、ホウノキ、ヒサカキ、シラカシ、イボタノキ、ウリハダカエデ、ハリギリ、ガマズミ、ムラサキシキブ、タブノキ、アカメガシワ・・・
そうした中、突然の異質な大木はユーカリです。
コアラの主食として名高い木ですが、戦中にパルプ材の不足を補うために、成長の早いユーカリを植えたそうです。
樹皮が剥がれ落ちる独特な木肌をしています。
南海の海底火山が土台となって、北西方向に移動しつつ、陸化しつつ、さらに火山の噴火を繰り返して現在の伊豆半島の形が出来上がっています。
伊豆は火山から作られたさまざまな石の一大産地です。
「伊豆石」といわれる「伊豆軟石」「伊豆堅石」、ガラス原料となる珪石、古くは黒曜石。
軽石なども建材として使われています。
大平山山頂まで半ばを過ぎたあたりに石丁場跡があります。
伊豆を支えてきた産業の名残りがこの山の中にもひっそりと残っています。
江戸城築城のために切り出された大名家の印のある刻印石が、宇佐美・伊東の石丁場跡で数多く見られます。
写真の印は前田家のものとのことです。
山頂が近付くにつれて、相模湾、伊東の町、小室山、伊豆大島、手石島が見え始めます。
山頂を過ぎてしばらくすると北側に富士山。
いくつかの尾根の向こうに見える、家々が点在している尾根は、私の住まいのある所です。
柏峠に向かう道はかなり急な下りがいくつも続きます。
誰が付けたか「キャベツ坂」。
確かにキャベツも転がる急坂でした。
柏峠から少し西に下った所にある旧柏峠隧道は、半分はすでに土砂に埋もれ、どこにあったのか分からなくなるのも、そう遠い先のことではないように思われました。
山がちな伊豆はどこに行くにしても峠を越えねばならず、昔の人々の営みの中で、峠は此方と彼方の世界を繋ぐ場所であるとともに、厳しい結界の地点でもあったことでしょう。
峠で行き倒れになるのはとりわけ不思議な事でもなかったのでしょう。
この先にある「お乳女(おちいじょ)観音」からもそんな往時が垣間見えます。
予定では「馬場平」へ行くつもりでしたが、柏峠付近から「キッコウハグマ」の花を探しながら歩いているうちに、道を見過ごして「柏嶺」まで行ってしまいました。
やっと「キッコウハグマ」の花にめぐり会いましたが、何かに気を取られていると、道迷いの原因になります。
気をつけましょう。
柏嶺からの眺望を楽しみ、あとは一路下山。
途中、できれば「鉢が窪火山」の火口を見たかったのですが、道が分からず次回また来ることにしました。
下山途中には、2万3千年前の「鉢ヶ窪火山」の噴火で積もったスコリア層の美しい露頭がありました。
下の方には火山弾も見えています。
今回見逃した「馬場平」と「鉢ヶ窪火山の火口」は次回の宿題に。
ムラサキシキブ
山野に自生する落葉低木。
園芸種は「コムラサキ」といって、こんもり小さく、実をたわわにつけるが、自生種の方は、実の数は少ないながら、粒は大きい。
キッコウハグマ
天城でも多く見かけましたが、花は初めて。
1㎝にも満たない小さな小さな花です。
メギ (実)
落葉低木ですが、細い枝の割にトゲトゲだらけ。
別名「コトリトマラズ」「ヘビノボラズ」というのが頷けます。
そのまんまですね。
メギは目木のことで、枝を煎じて目の洗浄に使う事から来ています。 整腸薬として用いられる漢方でもあります。
フユイチゴ
ノイチゴの中で唯一冬に実が熟します。
コビサワラで見かけた小さなカエルは「ヤマアカガエル」だと教わりました。
また一つ覚えましたよ。
11月13日(金)
晩秋の天城
冬至に向かっていっそう日が短くなる時期です。
いつもより1時間ほど早く水生地を出発。
私の好きな本谷川沿いの水生地歩道から登ります。
まだ薄暗く、空気も冷たく、歩くにつれて空が明るくなってきます。
後しばらくで涸れ沢という所で、沢の方から「どちらまで行かれるのですか?」の声。
水生地で先に出発された方でした。
しばらくお話を聞かせてもらいました。
ちょうど原生アマゴの産卵時期で、写真を撮りに来たとの由。
漁協の方だそうで、原生地保護のための禁漁を進めるため、アマゴの生息調査をしているとのことでした。
この沢にはサンショウウオやモリアオガエルも棲んでいるそうです。
涸れ沢を過ぎ、ブナとヒメシャラの林に入ります。
もうすでに葉を落とした後でしたが、林の道はサクサクと柔らかくて、朝霧に包まれた林の幻想的な風景が続きます。
早めに出て時間にゆとりがあったので、少し大回りをしてコマドリ歩道、コルリ歩道、オオルリ歩道を抜けて青スズ台まで登ってみました。
青スズ台からは東伊豆と相模湾が見えます。
青スズ台から八丁池への尾根道は夏場は木々にさえぎられて何も見えませんが、葉を落としたこの時期、深い谷を挟んだ対岸の山も見えます。
八丁池から下り八丁池歩道に入ると、ブナとヒメシャラの大木の林が続きます。
林間には点々と散り残るカエデ。
リョウブの大木もかなりあります。
リョウブは個性的樹形をしたものが多いです。
本谷歩道に入ると、意外にも見晴らしのいい所が何カ所かあり、ブナの根元に腰を下ろしてお昼にしました。
曇りがちな肌寒い日でしたが、ブナの木は暖かくて生きている感じが伝わります。
帰路は再び水生地歩道を水生地まで降りて来ました。
静かな晩秋の天城の森でした。
もちろん「河鹿の湯」に寄って帰りました。
ツルリンドウ
リンドウにの中でも薄暗い林間や草間に生えます。
他のリンドウの仲間と違って、小指の先くらいのツヤツヤした赤いナスのような実を付けます。
カジカエデ
チドリノキ
カエデ特有の掌のような切れ込みはありませんが、これもカエデの仲間です。
葉には鋸歯がありますが、重鋸歯といって、一つがギザギザギザとしているのが分かります。
水生地歩道の落ち葉