織物の種類

 


風通織り 大野純子

 ふうつうおり

風 通 織)

 

古くは室町時代に中国の明より渡来した名物裂にあり、両面錦と称したといわれ、さらにさかのぼれば、藤原時代にはすでにこの織法があったとも伝えられています。

 

風通織は、二重組織の表裏を入れ替えることによって織り模様を表す紋織物です。 2枚の織物をとじ合わせたような構造になっており、表織物と裏織物では配色が変わります。 荷物の梱包に使うプチプチシートを思い起こすとイメージしやすいかと思います。

 

使う経糸と緯糸の色数によって、表す色も変わり、二色風通、三色風通、四色風通などがあります。 

 

表布と裏布の間に空気を含んだ組織となるため。冬は暖かく、夏は涼しく、またシワになりにくいのも特徴で、袴地としても好んで使われたそうです。

 

一糸ごとに表、裏、表、裏・・・と同時に織り進めるので、大変手間がかかりますが、大変美しい織物です。

 

 

生紬 大野純子

 なまつむぎ

生 紬

 

1本の生糸は、2本のフィブロインとその表面を包んでいるニカワ質のセリシンとから成っています。 セリシンがあると染めつきが悪く、茶味の色をしているために、きれいな色に染めることができません。 また、麻のような風合いのシャリ感があるため、絹のしなやかさを損ないます。

 

通常私たちが目にするしなやかでつやの美しい絹糸は、外側のセリシンを精錬して取り除いたフィブロインです。

 

このセリシンが持つ欠点を生かしたのが生紬です。 

未精練、もしくは精錬を途中で終わらせることによって、独特の張りとシャリ感のある素朴な風合いを残した糸で織り上げたのが生紬です。 

その透け感も夏の着物には最適です。 

また、袷にすることもでき、オールシーズン着ることができます。

 

 

一楽織り 大野純子

 

いちらくおり

 

綾糸織の一種で変化斜紋組織の織物。 西陣で織はじめられ、和泉の土屋一楽が創始した藤編物に似ているので、この名がついたと言われています。 中山壽次郎先生の地元の八王子を始め、桐生、足利、米沢、十日町などで織られています。

 

中山先生の祖父にあたる方の残した見本帳が1冊だけ空襲を逃れて残っており、数十種に及ぶバリエーションがあります。

 

一楽織の着物を着てみると、平織の着物とは違うしなやかさ、体に添う柔らかさが心地よく、見る角度で組織がキラリと光って見えたりするのも楽しい着物です。