3月4日(月)
小僧山と猿山
太郎杉から続くワサビ田を川の源頭まで登り、三蓋山に続く支尾根をよじ登って伊豆山稜線歩道を横切り、さらに登ると三方に出ます。
滑沢峠を軸に、伊豆山稜線歩道が三蓋山へ向かう道、天城峠に向かう道、もうひとつ猿山へと向かう道へと分かれます。
その名のとおりの三方は、広く開けた気持ちの良いところですが、猿山へ向かう道はこの目印のない平らかなブナやヒメシャラ、ヤマグルマの森を抜けていきます。道はありません。
明瞭な尾根ならば間違うことはありませんが、よくよく現在地と進行方向を確認して歩かないと、方角を見失い道迷いをしやすいところです。
昨年の末から猿山に出かけて行方不明になった方も、こんなところで道迷いをしたのではないかと、ふと思いました。
小僧山の手前、北側の沢を下ります。
沢筋は地形図には現れない急峻な場所や滝が現れることもありますが、幸い、赤ペンキの目印が付けられており、滝見林道に出る手前の砂防ダムまで無事たどり着きました。
入口には「氷川歩道」の標識がありますが、とてもとても歩道と呼べる道ではありませんでした。
今度は一つ隣の沢筋を登り上がります。こちらは意外にも歩きやすく、そこかしこに炭焼きの石積みが残されていました。
小僧山と猿山の稜線に出て、猿山の手前950mピークから二本杉林道に下り、さらに914mピークの尾根を登り返します
この辺り、古い歩道の標識が現れますが、地図上破線として残っているものも含めて、崩落が激しくほぼ消失している道だらけです。
下れば登り返さねばならないのは当たり前ながら、アップダウンの繰り返しにヘトヘトになった一日でした。
小僧山と猿山は、伊豆の最深部。低山と言えどもなかなか難解な山です。
2月28日(水)伊豆三山
〇×▽□‥?!~)/>ケキョ、ケキョ
城山の登山口に着いたら、聞こえてきました。語尾はどうやらウグイスらしい。
穏やかで陽射したっぷり、暖かな日になりました。全面に陽を浴びた城山の南壁には、豆粒ほどのクライマーたちの姿が見えます。(青矢印の先)
このところは二山までしか歩いていなかったので、久しぶりに三山歩いてみます。
一番高い葛城山でも標高はわずか452m。しかし、いずれも急峻で、三山をつなぐアップダウンが結構こたえます。往復で12㎞ほどでしょうか。
背面登山口は葛城山へは最短ルートですが、急登です。立ちはだかる板状節理は圧巻です。
今日はどこから見ても最高の富士山でした。
コナラの倒木にシイタケを見つけました。シイタケの旬は、春子、秋子と年に2回。ちょうどこの寒い季節、旨味をたっぷり蓄えて一番おいしいそうな。
伊豆長岡のあやめ湯に立ち寄りました。
猛烈に熱い湯ですが、筋肉の疲れが取れます。
この昔ながらの佇まい、私の大好きな湯の一つです。
2月15日(木)石仏の道
昨日は20℃近くまで気温が上がり、今日も南寄りの暖かな風が吹いています。春一番の予測も出ていますが、北西寄りの風に変わる午後には、この暖かさも一転して雨となるようです。
雨の降らないうちに、ひと歩きにやって来ました。
久しぶりに東光寺の閻魔様と奪衣婆様に挨拶をして。
雲の流れは速く、崩れて来そうな気配の海と山並みです。
黄金色の茅の原は、ちょうど草刈りが行われて、春の支度が始まっています。
春本番前に草刈りが行われると、草原の植物たちは元気に顔を出します。楽しみにしているワラビも、草刈りがされないと生えて来ません。
人の営みと自然が共生する草原です。
花の美しい時や、実の見事さだけに目が行きがちですが、秋の草花たちの名残り、枯れてなお佳し。
こうなると、なかなか同定は難しいです。
キク科特有の綿毛を残しているもの、萼が残っているものにもキク科が多いような気がします。
まだまだ冬芽が美しい時期ですが、枝先がプックリ膨らんできたように見えます。
根元から差し渡し10m程もある枝を大きく広げたオオバヤシャブシの見事な大木。この草原で、唯一切られていない木です。
帰り道、春の息吹をやっと見つけました。今夜は天ぷらとフキ味噌です。
2月9日(金)城ケ崎海岸
久しぶりに城ケ崎海岸にやって来ました。雪の降る日もある寒い週だったので、暖かな陽射しと海沿いの道はこんな時にはぴったりです。
4000年前に噴火したといわれる大室山。当時は大惨事だったことでしょうが、年月と海に洗われて、タコ足のように入り組んだ美しい海岸線を残しました。ジオガイドの勉強をしている時は、よくこの海岸を歩いたものです。
岩場の一つ一つにそれぞれ名前が付いていて、漁師さんが沖から帰る時のメドとしてそれぞれに名付けたと聞きました。
富戸のぼら納屋から橋立まで、美しい入り江、岩場、海に島々が続きます。
久しぶりに訪ねた「かんのんさき」のポットホール。変わらずにありました。
いつかは波と岩に削られて、海へと持ち去られる時がくるのでしょう。
柱状節理はとりわけ素晴らしい。4000年前流れてきた溶岩の流れが見えるようでもあります。
いかにも暖かな伊豆の植物たち。
1月29日(月)八丁池
冬の八丁池を友人たちと訪ねました。1月の初めに来た時は、全く凍っていませんでしたが、今日は氷結しています。
氷の上に吹き寄せられた雪が美しい模様を創っています。 今年も歩きたいと思い、用意万端整えてきましたが、やはり暖冬のせいか氷は薄く、少し歩くとミシミシッとヒビが入ります。今年の氷上散策は5歩ほどで諦めました。
冬枯れのブナの木立や、重なり合う枝先が青空に映えて、新緑も紅葉も素晴らしいけれど、私はこの季節のブナ林が一番好きです。
冬の天城が初めての友人夫妻を、ちょっとばかり面白い樹々のところへ案内しました。
こちらは、ブナとヒメシャラが捩れるように一本の木のようになってしまった「仲良し」の2本。
背丈はさほどでもありませんが、根元から無数の株立ちになった大きなリョウブの木です。
根元にはトンネルができていて、人一人くらいは入ってビバークできそうな空間ができています。
いったいどれほどの年月を生きてきたのやら。 森は奥深い。
1月26日(金)大平山から柏嶺へ
数日前の初雪は積もるほどではなかったものの、用心に越したことはありません。近くの山をひと歩き。
登り口の丸山公園は、きれいに整備されていて、ちょうど咲き始めた白梅の足元には、一面にサザンカの花が散り敷いて思わず足を止めました。
大平山まで登ってきました。昨日までの寒さは少し緩んで、陽射しは暖かく風もなし。
いつもは、大平山より少し高い592mピークから西側を回るのですが、今日は初めて、大平山山頂から南~南西に伸びる尾根を辿ってみました。
海側の眺望が良く、とても良い尾根です。
伊豆大島の奥に、利島、新島、式根島の島影も見えています。一応ハイキングコースになっているようですが、途中で途切れて、地図上では破線になってはいるものの柏峠までは不明瞭です。
雲一つないまっさらの青空。
広い茅の原になっている柏嶺から広がる景色は最高です。
今日は風もなく快適なので、山頂のベンチでゆっくりお昼を食べながら、独り占めの景色を楽しみました。
昨年、初めて出会ったのはちょうど今頃。今年も再会。
胞子嚢(ソーラス)から直接小さな新芽が出てくる不思議なシダ。
この方が手っ取り早いと思ったのでしょうか。
房総半島南部、大磯丘陵、伊豆半島、伊豆諸島、九州南部と五島列島、沖縄とかなり離れた飛び地のような不思議な分布をしているそうです。
植物の中にはこうした分布をするものがいくつか見られます。どうしてそうなったのか‥‥想像すると切りなく興味深く、面白い。
河津桜でしょうか、もうすぐ咲きそうです。
1月17日(水)天城の太郎杉
久しぶりの太郎杉です。天城一、樹齢は450年を越えると聞いています。よく知られている大杉のほか、思いがけない山中で杉の巨木に出会うこともよくあります。
江戸時代、天城では伐採が禁じられた9種の樹木の一つが杉でした。領民には、禁じられた樹々以外の木は薪や炭用として自由に伐採することが許されており、そのお礼として杉の苗木を植えたと伝わります。そうして成長した杉が「お礼杉」として各地に残っています。
自由であることはいいことですが、「不自由さの自由」によって育まれるものもあります。
今日は、この太郎杉から尾根を伝って三蓋山に向かって登って行きます。美しい尾根で、北側に開けた樹々の間、富士山と白く連なる南アルプスの峰々に、しばらく足が止まってしまいます。
同行の友人は南アルプスをよく歩いているので、その連なる山の名前が分かります。自分で登ってその山々を眺め、名前がわかると、私とは違った嬉しさがあるのだろうと羨ましくなります。
旧伊豆山稜線歩道にぶつかり、しばらく辿りましたが、大きな崩落個所に行き当たり撤退。
帰路はもう一つ北側、940mピークと862ピークを結ぶ尾根を下ってきました。こちらも実にいい尾根でした。
940mピークは小さな火山の噴火口のように、面白い場所でした。
地図読み練習も兼ねていましたが、最後の最後、気を抜いたところで尾根を外しました。
人間の感覚など本当にあてになりません。山は油断大敵、いい勉強になりました。
昨年の12月に太郎杉から猿山に入った登山者が行方不明になり、いまだに見つかっていません。今日も尾根から切れ落ちた斜面や沢筋に注意しながら歩きましたが、見つけることはできませんでした。何とも気持ちが晴れないままです。一日も早く見つかってほしいと願うばかりです。
1月4日(木)歩き初め
今年の初歩きに八丁池まで出かけて来ました。
今日も暖かな日です。この時期、たいてい八丁池は全面氷結していて、氷上を歩くのを楽しめるのですが、今年は氷のひと欠片もありません。
今年も元気に歩けますようにと、年末年始で少しなまった足をゆっくり慣らしながら、黄金色の落ち葉に染まったブナ林の冬木立を下りてきました。
春一番の花が咲き始めていました。いずれもジンチョウゲ科。
その名のとおり、伸ばした枝は3つの枝に分かれ、それぞれがまた3つの枝に分かれ、を繰り返し、花が咲いたように丸く美しい樹形になります。
こうして互いの枝同士が重ならないようにしながら、お陽さまを目いっぱい浴びようとしているようです。
別名ナツボウズ。冬に一人青々とした葉を茂らせ、夏に葉を落とします。
小低木なので、背の高い樹々たちの陰で夏は不利。他の樹々が葉を落とす冬を狙い、地面まで差し込む日を浴びるために冬に葉を茂らせるようになったのでしょうか。
植物の巧みな生き残り戦術は、まったく恐れ入るばかりです。
元旦早々、大きな地震が起き、いまだ余震の治まらない状態が続いています。救援物資を届けるための航空機の事故も起きて、刻々と伝えられる状況をただただ聞いているしかなく、いたたまれない気持ちでいっぱいです。
恐るべき自然の猛威の前に言葉もありません。少しでも早く落ち着いてほしいと願うことしかできません。
12月25日(月)猿山
低山とはいえ山がちな伊豆半島の小僧山から猿山、さらに十郎左エ門に続く伊豆の最深部には登山道はなく、地図上の破線道もほぼ消滅していたり、崩落して途切れてしまったり、地図読みができないとかなり厳しいところです。
その猿山に12月10日に出かけた横浜の男性が、同日の18時ごろに「道に迷ったけれど林道に戻ったので大丈夫」という家族への連絡を最後に、行方不明になっています。翌日から警察、消防の捜索が入ったものの、今に至るまで見つかっていません。
伊豆の山を縦横に熟知している私の友人は、すでに捜索に出かけたそうですが、もう一度行くというので私も同行させてもらいました。
健脚な友人の足手まといになるかも、とは思いはしたものの、眼は2つより4つあった方がいいだろうし、それ以上に、馴染んできた山のどこかで帰れずにいる人のことを思うといたたまれず、何とか見つけて家に帰してあげたいという気持ちです。
男性が歩き始めたという太郎杉歩道から三蓋山に続く尾根を登り上がって、旧伊豆山稜線歩道までやって来ました。
ここに迷い込んだ可能性もあります。崩落のため現在は新たな道が別につけられています。
まだ捜索が入っていない小僧山から伸びる支尾根を滝見林道まで降り、別の支尾根を登り返し、小僧山に戻りました。
さらに宮越歩道に下りる支尾根を下りてみました。
宮越歩道は私は初めてです。
地図上には破線が付いていますが、沢沿いの道はすっかり跡形はなく、大きな崩落個所もあって、尾根によじ登って避けるしかありません。
初めて来る土地勘のない人は、この破線道を行ってしまうことは十分考えられます。
この季節の天城の森は、すっかり葉を落としたブナ林が美しく、林床も見通しが良く、狭い領域でもあり、これだけ探しているのに見つからないのが不思議なくらいです。
何とか少しでも早く見つかってほしいと願っています。
山はどんな山でも危険と隣り合わせ。改めて、下準備の大切さ、万一道に迷って日が暮れても下手に動かないこと、連絡するならば真っ先に警察か消防へ。いろいろなことを今一度わが身に言い聞かせる機会にもなりました。
友人が本を持ってきてくれました。
いろいろな人の体験談、知識も大切です。再点検の参考にもきっかけにもなります。
12月21日(木)万三郎岳への尾根
山神様尾根から馬の背に登り上がり、万三郎岳から小岳を経て戸塚尾根を下るルートは、以前より行ってみたいと思っていたコース。地図読みを教わった友人にお願いし、初挑戦です。
出発地点はシラヌタの池。
モリアオガエルの棲む山深い静かな池の周辺には、杉、ケヤキ、モミなどの見上げるばかりの巨木が見事です。
天気予報では強風の予報が出ていましたが、地上はいたって静か。
ところが登るにつれ、特に西に開けた稜線はものすごい強風。おまけに相当な急登。
岩や木にへばり付きながら、何とか山神様の祠までたどり着きましたが、この先はさらなる最後の急登が待っています。
見上げる万二郎岳はまるで壁のようです。
何とか登り上がった馬の背は、先ほどの強風がまるで嘘のようです。ほんの少しの位置の違い、小さなくぼみでさえ風の吹き付け方はまるで違います。やっと息が付けました。
久しぶりの万三郎岳山頂付近には、うっすらと雪が残って、気温は零下3℃。キンキンに冷えています。
小岳まで下って、帰路は戸塚尾根を下ります。
戸塚尾根は、ブナの居並ぶ実に美しい尾根でした。山神様尾根に比べれば穏やかで、新緑の頃もとても気持ちが良いそうです。
今日はものすごい風でのんびりできませんでしたが、春を待って再訪したいと思います。
帰路、お化け杉に立ち寄りました。何年ぶりでしょう。変わらない威容でした。
12月19日(火)奥沼津アルプス
沼津アルプスの全景です。左から大平山、鷲頭山、小鷲頭山、徳倉山、横山、香貫山と続いています。「アルプス」などという大そうな名前に、初めて聞いた時は笑ったものですが、どうしてどうして、歩いてみれば納得の名前です。
伊豆半島がまだ影も形もなかった大昔。海底で噴火した火山は、侵食を受けつつも、「火山の根」と言われる堅い部分だけが残り、その後フィリピン海プレートが本州に衝突して伊豆半島が出来上がる過程で隆起し、陸上に現れてきました。
そんな海底火山の名残りの地形が至る所で見られます。
侵食されずに残った山々は低山ながら急峻なアップダウンの繰り返しが続きます。
稜線上にはところどころ大岩が鎮座し、右なり左なりを巻かないと通れないところがいくつか。
梯子がかけてある箇所も2~3か所あります。 こんなところまで梯子を担ぎ上げて設置してくれた方に、感謝しかありません。
久しぶりに奥沼津アルプスと言われる大嵐山から大平山までを歩いて来ました。
伊豆にはいくつか大平山があります。沼津アルプスの大平山は「おおべらやま」、伊東は「おおびらやま」。 もう一つ下田の方にもあったでしょうか。
平らかな山とは名ばかり、山頂までは大岩あり、梯子ありの急登です。
今日は大平山で折り返し往復することにしました。大岩と梯子と急坂を帰路ももう一度。良い足慣らしになりました。
曇りがちでしたが、穏やかな一日でした。
今年ももうすぐ終わります。
12月8日(金)伊豆二山
城山、葛城山、発端丈山の伊豆三山はちょっと厳しいかと思い、城山、発端丈山の二山を往復するコースを、山デビュー3度目の友人とともにやって来ました。
暖かく風のない穏やかな晴天。眺めも良く、城山から発端丈山へと足取りは順調です。
帰路、益山寺に立ち寄りました。毎年この時期、大カエデと大イチョウはちょうど紅葉の盛りを迎える頃です。
イチョウはかなり葉を落としてしまっていましたが、隙間なく落葉で埋め尽くした足元の見事さ。
山里の寺の境内で数百年を生きてきた大木は、威風堂々としていながら静か。
毎年、毎年、楽しませてもらい、私のいなくなった後もきっと静かに大地に立ち続けていることと思うと、穏やかな気持ちになります。
帰路、城山から下る登山道は、岩がゴロゴロした急な下り。友人はバテ気味ではあったものの何とか歩き通すことができました。きっと自信になると思うので、次の山にもどんどん挑戦して欲しいと願っています。
12月5日(火)三蓋山
伊豆の山を歩いていると、必ず富士山の姿を探してしまいます。それが木立の間に間にかすかに見える欠片のような富士山でさえ、「おお・・・」と嬉しくなります。
三蓋山の山頂からツゲ峠に下る尾根筋から見えた眺めは、これまでの1、2を競うほどの絶景でした。
夕方から雨模様の予報どおり、富士山のてっぺんには雲がかかり始め、空気はキンと冷え、だからこその連なる山並みの墨絵のような美しさ。山の天気の崩れは早く、ポツリと雨粒が落ち始めはしたものの、しばらくその場を動きたくないほどでした。
今日は友人のグループに混ぜてもらって、地図読みをしながら、尾根道をたどって三蓋山往復をするコース。
以前から地形図を眺めては、行ってみたいと思っていたところでした。ブナは言うに及ばず、アカガシやモミの大木の連なる美しい尾根でした。
またゆっくり再訪したいと思います。
静岡県では絶滅危惧Ⅱ類。大きなブナに付いた苔に着生していました。
私は初めて出会いました。マンネングサらしい花を咲かせるようですので、花の時期に気を付けてみようと思います。
11月29日(水)八丁池
梢の先でゴウゴウと風が吹き荒れて、森の樹々はほとんど葉を落としてしまっていますが、高い樹々に守られた谷底のような林床は、穏やかで、頼りなげな晩秋の陽射しが足元まで届きます。
サクサクと落ち葉を踏む音、風に舞った枯葉がコソリと落ちる音、水の少なくなった川音、小さなミソサザイの羽音、今日はアオバトの声も聞きました。
そんなささやかの音に耳を澄ませながら、静かな森を歩くのがとても好きです。好きでした。
ところが、近ごろではそうばかりも言っていられなくなりました。日本各地でクマの出没や被害の報が絶えず、伊豆半島にはいないと言われていたツキノワグマが、2度までも罠にかかり、100年ぶりのことと大きなニュースにもなりました。
これまではクマ鈴なしに静けさを味わうこともできましたが、クマ鈴をつけるようになりました。一番いいのは出会わないようにすること、こちらが先に気付くようにすることでしょうか。
ヤシャビシャクは、いつもは目立ちません。
先に葉を落としたブナに少し遅れて色づくこの季節が一番目立ちます。
大きなブナの倒木。たくさんのキノコを出してくれて、存分に楽しませてもらいました。来年もよろしく。
今年初めてヒラタケを見つけました。姿形が似ていることから、別名を「オイスターマッシュルーム」と言うそうです。
牡蛎の美味しくなる頃に出始めるヒラタケは冬キノコ。今年は出会えないかと思っていましたが、幼菌もあり、まだまだこの先も楽しませてもらえそうです。ヒラタケ、ウスヒラタケは私の好きなキノコのトップ3でもあります。
色の少なくなった森に真っ赤な小さなツルリンドウの実。
今日も来てよかったなあ…