8月19日(金) 八丁池
朝「よし!」と思って出かけて来ました。
陽射しはまだまだ強くても、木陰を渡る風はヒンヤリ涼しくて、杉木立の向こうの青空には下弦の月。
秋の気配がしてきました。
今日の八丁池です。 空気は澄んで島々が海に浮かびます。
一方で富士山はすっかり雲の中です。
巡回定点観察も久しぶりです。
ヤシャビシャク: 全員健やかなことを確認。T1は大ピンボケですが、実もふくらんで元気です。
ウロ住まいのT2も元気です。
T2の少し上にはギボウシが育っていました。
天城ではギボウシは地面で見かけることはありません。
鹿に食べられてしまうので、倒木や大木に住み着いたものだけが生き残っています。
因みに、T I、T2は発見者のイニシャルをいただいています。
O1も変わらずです。
ジンバイソウ: 花期は終わりかけていましたが、数本咲いているものあり。
ピンボケ残念。
アオフタバラン: こちらも終盤ですがひっそりと咲いています。
今日はトンボソウに数株出会えました。高さは10㎝ほど。 小さな花で3㎜~5㎜といったところ。
ジンバイソウもアオフタバランもトンボソウも小さい上に薄暗いところに生育しており、花色も全く目立ちません。
よくよく見ると本当に美しい花たちです。 残念ながらピントが合わずなかなかうまく撮れません。
フクラスズメの幼虫: 毎年ナガバヤブマオの群落ができる一角があるのですが、この幼虫にすっかり丸坊主にされてしまうことがあります。今年はうまく折り合いがついているようです。
「ふくらすずめ」という可愛らしい帯結びは冬にふっくら丸っこい雀をイメージしたものと言われていますが、この成虫のフクラスズメも毛むくじゃらでふっくらしていていることから名付けられたようです。
8月8日(月)
今年も始まりました
水ケ塚の駐車場からは少しばかりの雲をお供にした富士山がきれいに見えています。
山頂を目指す登山客を横目に私たちはキノコ探索へと出発です。
森は日に日にキノコの気配の濃くなりつつあります。
まだまだ本命のキノコたちの季節ではありませんが、ボツボツ出始めています。
コガネヤマドリ : イグチの仲間の黄金色の美しいキノコです。
みっちり肉厚、ズシリと重い。切っても仲間で黄金色です。
数本採れました。
ハナビラタケ: 昨年から師匠が探していたキノコを同行者がふと見つけました。 手の平大の美しいバラの花束のようなキノコです。
私も見るのは初めてです。
その他の食菌はヒロハチチタケ、カノシタ、ヌメリササタケ。
まだまだ少ないですが、キノコシーズンの到来です。
キンレイカ: 帰宅して調べたところ、ハクサンオミナエシの変種。
コキンレイカというのもあるようですが、こちらは日本海側に生育しているとのことなのでキンレイカと思われます。
葉が独特な掌状、花もよく見るとオミナエシによく似ています。
コイチヨウラン: 先日出会ったハコネランにとてもよく似ていますし、同じコイチヨウラン属です。ハコネランは花がすべて黄緑色ですが、コイチヨウランは唇弁に紫色が入ります。
こちらも大ピンボケで残念ですが、きちんと自分の目で確認してきました。もう少しじっくり観察したかった花です。
7月21日(木) 八丁池
ずいぶんと久しぶりの気のする八丁池です。 先週は雨が降り続きようやく雨も上がる傾向にあるようです。 今年の梅雨明けは早く、猛暑の1週間が続いたかと思えば、梅雨の戻りのような日々。
暑過ぎるのも雨の降り過ぎるのも困りもの。 されど歩けないのもやっぱり辛い。
定点観察中のお馴染みのヤシャビシャクではありません。 ふとしたきっかけでヤシャビシャクの情報交換をするようになった方からいただいた新たなヤシャビシャクとの遭遇情報。
私も見にやって来ました。
ブナの倒木とともに手の届きそうなところにたくさん実を付けたヤシャビシャク。
もう少し低い位置にあれば鹿に食べられてしまったかもしれましせんので不幸中の幸い。
しばらくはこのまま大丈夫でしょうが、このヤシャビシャクも倒木の運命次第です。
もう一つはブナのウロの小さなヤシャビシャク。
小さいながら艶々と元気そうな様子です。
うまく育ってくれれば目前で花が見られるかもしれません。
定点観察点が加わりました。
先週までの降り続いた雨のせいか、今日はアブと小さな顔にたかってくる虫の大量発生で、おちおちカメラのシャッターも切れず、お昼のおにぎりもじっとしているとメッタ刺しに合うので歩きながら何とか食べました。
顔に寄ってくる虫は虫よけネットで防げますが、アブは服の上から所かまわず刺してきます。 終始付きまとい動いていても刺されます。
同じアブがずっとついてくるのではなくて、テリトリーごとのアブが順繰りにブンブンやって来るのでエンドレスなのです。
定点観察中のアオフタバランとジンバイソウは花柄をヌウッと伸ばしてきています。
もうしばらくしたら咲きます。
サワオトギリ: オトギリソウの仲間も多様で同定が難しい植物です。
見えるでしょうか。花弁の縁をレースのように点々と黒い点が並んでいます。葉の縁にも同様に黒点があります。葉の中にはそれとは逆に透けるような明点がたくさん見えます。サワオトギリの特徴です。
石かと思い踏みそうになった大きなカエル。
真面目に調べてみたところアズマヒキガエルのようです。
再び入れるようになった河鹿の湯です。
山歩きの後はやはり温泉がないと淋しいです。
外を流れる狩野川では鮎釣りが始まっていました。
7月8日(金) 富士山自然休養林
先日歩いた折に出会った方に教わったハコネランです。
その時はわずかに一株でしたが、今日は近くで何株も見つけることができました。
花柄の長さは10㎝程、花の大きさは1㎝弱、地面の苔に溶け込むような色で、教わっていなければ今日見つけることはできなかったでしょう。
イチヨウランと同じく葉は一枚ながら、こちらはコイチヨウラン属。
イチヨウランに比べるとはるかに小さな花です。
日本の自生ランの美しさは格別ですが、その格別さが盗掘も生みます。
ハコネランも絶滅危惧種です。
本日の予定は1600m辺りから宝永第二火口までの予定でしたが、天気予報に反しかなりの雨模様。 サッサと初志変更、辛うじて雨の降っていない辺りからの散策となりました。
湿度100%の林内は石にも古木にもぎっしり苔が付き地面も空も滴るような緑です。 気持ちのいいことこの上なし。
未同定:イグチの仲間が出てくると、キノコの季節も近い。
ツルアジサイ: 枯れた木のてっぺんをきれいに飾ってお見事。
バイカウツギ: 花弁4枚、被子植物の中では珍しいのだそうな。 初お目見えです。
7月1日(金) 河津滝めぐり
森の木陰の山道は涼しく、おまけに天城峠から河津の大滝まではずっと下り一辺倒。 しかも気にならないほどの緩さなので勝手に足が前に出るという楽チンさ。
真夏はこれに限ります。
旧天城隧道の中はさらに4、5度は気温が低く、ほとんど冷蔵庫の中のようで、まさに極楽ですね。
友人と二人、ゆっくりゆっくり、立ち止まり立ち止まり、とりとめのない話をしつつ、花や樹々を眺め、水辺を渡る涼やかな風と共に下っていきます。
まだ、やっと入口の平滑ノ滝に着いた頃にはすっかりお腹が空いて、早々と汀でお昼としました。
清々とした杉木立の宗太郎園地を抜けると、だんだん高度も下がり暑くなってきますが、しばらくすると河津七滝の最上部、猿田淵に着きます。
滝沿いの木道を釜滝、エビ滝、蛇滝、初景滝と下ってゆきます。
真夏の強烈な光と強烈ゆえの影の濃さ、滝の水しぶき、夏もまた佳きかな。
コロナ前には盛夏でもたくさんの外国人観光客がいましたが、コロナになってからはほとんど人もおらず、ゆったりと大滝まで下って来ることができました。
こんな日にはやっぱりかき氷、バス待ちの10分でかきこんで久しぶり大満足です。
今日から河鹿の湯も外来者入浴が可能になりましたので、立ち寄って汗を流して帰ります。
6月27日(月) 二ツ塚
暑そうなので少し涼しいところへとやって来ました。
私は見たい花があり、同行のキノコ師匠は行ったことがないので二ツ塚とのご要望。
季節にはまだ早いものの、ぼちぼちキノコの気配がしてきました。
キイロスッポンタケ: 昔の畑にあった肥溜めの臭いがするというので早速確認。 ハイ、まさしくそのとおりの悪臭。 それでもこの臭いに引き付けられる虫がいるというので、生き物の世界は奥深い。 師匠によれば、カサの部分が臭うので軸だけは食べられるそうですが、わざわざ採って食べようという気には到底なれない臭いでした。
カヤタケ、トンビマイタケ、あとは覚えきれませんでした。 今年もキノコの季節が楽しみになってきました。
イチヨウランです。
今年も無事を確認。
木陰の目立たないところ、ひっそりと数株咲いていました。
派手さはないけれど、ランらしい姿ですね。
御殿庭から子天狗塚を経て二ツ塚に向かいますと、前方には愛鷹の山並み、その奥には天城をはじめとする伊豆の山々や箱根の山々、さらにその向こうにはうっすら海に浮かぶ伊豆大島も見えてきます。
振り返れば宝永山とわずかに谷筋に雪を残した富士山頂。
上塚の方に登ってみました。
3歩進んで2歩下がる砂礫の山を暑さの中やっとこさ登ると目前に富士の裾野、ゆっくりと登ってゆくブルドーザーも見えます。 山開きももうすぐです。登った甲斐あり。
富士山は見えても見えなくてもこの広大さ、何度来てもいいところです。
山頂で出会った方につい今しがた梅雨明けしたと聞きました。
まだ6月中の梅雨明けは、日照りと水不足、電力不足が心配です。
梅雨が長引けば雨の被害も大きいのですが、何とか上手い塩梅というわけにはいかないものかと思います。
6月13日(月) 暗沢山
伊豆半島には一等三角点が3カ所あります。 伊豆の最高峰万三郎岳と万太郎と呼ばれる達磨山。
そしてもう一つが暗沢山です。
標高はわずか520m、伊豆の南西部にありアクセスするにはかなり遠く、長らく懸案のまま後回しになっていました。 一年でも一番昼間の長いこの季節、ようやく一等三角点の踏破が叶います。
松崎の岩科学校より出発。
指川峠に続く登山道の入口には二体のイボ取り地蔵様。
全国各地、身近なところでイボ取り地蔵様を見かけますが、それほどまでに昔の人はイボに悩まされていたのだろうかと常々不思議に思っていました。
イボはとても身近なありふれた病気で小さな傷口から簡単に感染し、今でもなかなか根治が難しかったり、時間がかかったりするようです。
とはいえ、命に係わるとも思えないのにさほどに多くのイボ取り地蔵様がいらっしゃるのはどうした訳か。 探ってみると面白そうです。
閑話休題。
沢筋の登山道は、ところどころ石畳の名残りや鉱物の試掘跡といわれる穴、石積みの水路、背負子のまま腰を下ろせるような大石などが残り、かつては麓の人たちの大切な生活道であったのでしょう。
残念ながら、今では歩く人も稀で、出発の時に見送って下さった地元の方の言どおり、すっかり荒れてしまっています。
石に刻まれた道標と山神社のある指川峠を越えて、杉木立を抜けると大峠で暗沢山はすぐそこです。
頂上には立派な電波塔が建っており、西伊豆の堂ヶ島、三四郎島、今山が望めます。お天気が良ければ富士山も見えるようです。
この辺りの地形図を眺めると、険しい山間に不思議にポッと開けた平坦地がいくつか目に留まります。
この近く、およそ130万年前に噴火したとされる蛇石火山の噴出物が深い谷を埋めてできたと言われています。 そのうちの一つ、断層帯に水が溜まった大池を訪ねました。
想像以上に大きく幅は450mにも及ぶそうで、広大なすり鉢状の湿原になっています。
昔の人たちはこの山深い獣さえ渡れない湿地を隠し田として利用していたそうで、水路跡の石積みも残っています。人々の暮らしの厳しさが偲ばれますが、人の出入りを拒む取り残されたような山奥の湿地は、それゆえに手つかずのままに残る不思議な空間です。
ところどころ痕跡が途絶えるかつての古道をたどり、無事戻ってきました。
6月10日(金)
初夏の植物観察・天城その2
6月5日に関東地方が梅雨入りしました。 東海地方はまだです。
はて?と思うのは毎年のこと。 熱海は地理上は東海地方ではあるけれど、どう見ても関東地方に圧倒的に近い。 熱海も梅雨入りと宣言するとしましょうか。
今週はずっと雨続き、何とかもちそうなので出かけて来ました。
キヨスミウツボ:ちょうど治山工事をしている近く、荒れてしまっているところのすぐ近くなのでどうしたか心配でした。今年はまだ蕾の状態ながら無事を確認。
主にアジサイ類の根に寄生するそうなので、宿主がなくならない限りは大丈夫でしょうが、そうそう頻繁に見ることのできる植物でもありません。
土の中からいきなりの花。やはり珍しいですね。
オオバアサガラもフジのような花穂を付けて、もう少しで咲きそうです。
日一日と緑を増すブナの森、今日はエゾハルゼミの鳴き声がしきりです。
モリアオガエルの鳴き声と浅瀬にはイモリ。
八丁池も夏模様になってきました。
6月2日(木)
初夏の植物観察・天城
マメザクラはとうに終わり、ヤシャビシャクの花もすでに実になり始め、トウゴクミツバツツジは花を落とし、アマギシャクナゲの時期も過ぎました。
アマギツツジにはちょっとばかり早い。 今日は特にこれといった目当てがありませんでしたが、思いがけない花に天城では初めて出会いました。
タンナサワフタギ: 天城一帯にはたくさん自生しているのですが、どういうわけかこれまで一度も花に出会ったことがありませんでした。 今日見かけた花の咲いている木以外にもそれこそたくさんの木がありますが、まったく花がありません。 どうしてでしょうね。
よく似たサワフタギも花と葉だけではなかなか見分けが難しいのですが、サワフタギは瑠璃色の実をつけるのに対しタンナサワフタギは黒い実を付けます。 実がなるとはっきりします。
草木染をする人はよくご存じかと思いますが、サワフタギの灰はアルミ分を多く含み、古来から茜や紫根の媒染剤として使われてきました。
今では木を燃やすこと自体が環境面でできなくなってしまっていますし、そもそも灰にできるほど大量に採取も叶いません。古来の媒染による古来の染めも難しい時代になりました。
ツクバネウツギ: 小さな花で色も控えめ。
散り敷く落花に気付いて見上げれば、うつ向くように咲く筒状の可愛らしい花がたわわです。
散った後に羽子板の羽根のような萼がしばらく残るのでこの名があります。
ヤマツツジ:アマギツツジかと近づいてみれば葉が違います。
ヤマツツジも標高1100m辺りではまだ満開です。
いつだってその時その時の花が出迎えてくれます。
今日もまた素敵な花たちに出会えました。
5月26日(木)
富士山自然休養林
今日は下り坂、明日は大雨予報。
早めに出発して出かけて来ました。
1年ぶりの再会の花たちを確かめつつ、水ケ塚から須山口登山道をゆっくり登って行きます。 植物観察が主体ですと思い切りスローペースなため友人の夫君は欠席でしたが、このところは軒並み出席で、熱心に花の写真を撮っております。
何があったか知らないけれど、まあ良い傾向ではあります。
シロバナヘビイチゴ、ワチガイソウ、ツルシロカネソウ、イワセントウソウ・・・・
トウゴクミツバツツジもここではまだまだ花盛りです。
イチヨウランはヌッと花柄を伸ばし始めていました。ラン科かユリ科と思われる相変わらず未同定もまた花柄を伸ばし始めています。今年こそ正体を見極めたいものです。
寒くもなく暑くもなく快適に御殿庭下までやって来ました。
ちょうど雲の切れ間から宝永山と雪を残した富士山頂。
晴天であっても姿を見せないことの多いこの季節、上々です。
二ツ塚に向かって下ってゆく道は新緑のカラマツ林が本当に美しい。
四辻まで来ると靄がどんどん登ってきて山頂を隠したり見せたり、おにぎり片手にシャッターチャンスを狙います。
今日の第一目的のヤマシャクヤク。 友人たちを初めて案内します。
登山道のところどころにポツポツと生えているヤマシャクヤクの蕾はまだ固く、群生地はどうかなと思いましたが、ちょうどよい時期でした。
まん丸にふっくり開き始めた純白の花のなんと美しいこと!
清楚でいながら豪華、可憐でありながら凛として山の花の女王様です。
5月19日(木)
久しぶりの好天。
ブナの森の緑の天蓋の下、木洩れ陽受けて言うことなし。
もう終わったか思ったトウゴクミツバツツジも1000mを越えたあたりにはまだまだこれからという木もありました。
八丁池も緑を映し、モリアオガエルの鳴き声も聞こえ始めました。
久しぶりに青スズ台に足を延ばしてみました。
ここからは下田方向や伊豆七島が良く見えたのですが、周りのアセビの背丈がすっかり伸びて、景色はほとんど見えなくなってしまいました。
鹿がアセビを食べるようにでもなれば、また景色も開けるのでしょうが。
道標ドウダンツツジも健在でしたが、一枝枯れてしまっています。
替わりのように根元にトウゴクミツバツツジが育ち始めていました。
青スズ台の尾根にはトウゴクミツバツツジやドウダンツツジの群落が多く見られます。
ゆったり楽しみながら下ってきました。