11月23日(祭)
伊豆二山
先々週歩いたばかりでしたが、休日で道路が混まない所をと考えて再び伊豆三山へ。
今回は葛城山はスルーしましたので伊豆二山となりますか。
城山山頂の三角点はその場の岩を加工してできています。
普通は四角柱が埋め込まれていますので、改めて見てみると珍しいかもしれません。
今日は11月も末とは思えないような暑い日で景色も霞んでいます。
益山寺の大イチョウと大カエデ: 黄金色に色づいてきました。 あと1週間もすれば燃え立つようになることでしょう。
休日のせいもあって、いつもは静かな山寺にも何組かの人たちが黄葉を見に来ていました。
帰路は山分岐まで戻り白鳥山の脇に抜ける沢沿いの道を行ってみることにしました。地図に道は記載してありますが、人の踏み跡はなくしばらく藪漕ぎ状態の後、すでに使われていない作業道に出ました。 古い神社を過ぎるとようやく人家が現れ、白鳥山の真横に下りてきました。
まるで時が止まったかのような静かな山里でした。
白鳥山は柱状節理が素晴らしい岩山ですが、採石場として使われていますので、3年前に来た時より少し低くなったように思われました。
いずれは砕石し尽くして跡形もなくなってしまうのでしょう。
コモチシダ: だと思います。
シダの同定は難しく、葉の形、胞子嚢の形と付き方などを細かく見ないとなかなかわかりません。ここでコモチシダに遭遇するとは思いませんでした。
浄蓮の滝のハイコモチシダは近くで見ることができませんので、「子持ち」の時期に是非また見に来たいものだと思います。
11月16日(月) 八丁池
背の高いブナやヒメシャラなどの樹々はほとんど葉を落としてしまい、森はすっかり明るくなっています。
紅葉は見上げるばかりではありません。
地面一面をとりどりの落葉が埋め尽くし、華やかな落葉たちを踏み分けながら歩くのは、なんて贅沢で気持ちの良いことでしょうか。
明日になればすっかり葉を落としそうな散り残った林間のカエデは、赤や黄色の霞のようです。
定点観察中のヤシャビシャクもきれいに黄葉しています。
八丁池はこのところの晴天続きで水量は減っているようです。
11月の半ばとも思えない暖かな一日、今年の冬は寒くなるでしょうか。
またとない美しい秋の一日でした。
11月12日(木) 伊豆三山
八丁池に行くつもりで家を出たものの、地面近くにたまった靄の中に島のように幻想的に浮かぶ伊豆三山と沼津アルプスを伊豆スカイラインから見た途端、行先変更。城山登山口までやってきました。
一つ目の城山はまさに火山を感じさせる山。 朝日を受けて垂直にそびえ立つ南壁。 頂上に続く岩だらけの尾根には見事なウバメガシの群落が続きます。
ウバメガシは海岸近くのこんな土も栄養もなさそうな岩場に立派に育ちます。 こんなところが好き、というわけでしょう。伊豆の西海岸にはとりわけ多くみられます。
山頂からは富士山、駿河灘、愛鷹、箱根、天城までをグルリと見渡せ、眼下には田方平野に弧を描く狩野川。
二つ目の葛城山は急斜面に板状節理の見事な背面登山道から登ります。
こちらから登るとスカイダイビングの着地点のある山頂に着きます。
ロープウエイのある方の山頂は、以前なら日本人は自分たちだけというくらい外国人観光客があふれていましたが、今日は日本人観光客のみで、まばらな人出でした。それでも皆マスクをしていて、登ってきた私は少々苦しくて早々に退散。
三つ目は発端丈山。
こちらは静かに独り占め。
頂上に一本立っていたイチョウの木は、昨年の台風で折れてしまいましたが、新芽が吹いてきました。
キッコウハグマ:今が盛り。
ヤブサンザシ: 初めて見ました。 サンザシは大好きなので一つ食べてみました。
食べられなくはありませんが、サンザシとは大違い。
あまり味がなく少しざらついた感じのねっとりした食感です。
ヤマハゼ: 今一番目立つ赤です。カエデとはまた違った独特の赤。
たくさんの実をぶら下げて美しいです。
益山寺の大イチョウと大カエデ: 紅葉にはまだ少し早かったようです。
この大イチョウには乳垂といわれる気根が付いていて樹齢350年~400年だそうです。
大カエデの方は自らの重みで圧縮されたような樹齢900年の重みを感じさせる姿。
いずれもお見事。
帰路に南壁を見上げると、朝、麓にいたクライマーが張り付いています。
下にいるのが女性のようです。すごいなあ、楽しいのかなあ、面白いのでしょうね。きっと。
久しぶりの伊豆三山往復。低山見くびるべからず。
登って下りて登って下りて、またまた登って下りては結構こたえます。
良い運動になりました。
10月28日(水) 十国峠
少し雲が出てはいるけれど、きっと富士山が見えるだろうと思って、久しぶりに十国峠まで来てみました。 やっぱり富士山。
初めて十国峠に来たのは中学だったか高校だったか、修学旅行の時でした。
だだっ広い濃尾平野の真ん中で生まれ育ったためか、四方グルリと高みから見渡せる地の果てのような十国峠はとても印象深く、修学旅行で唯一記憶に長く残ってきた場所でした。
まさかこの近くに住むことになろうとは想像もしないことでした。
古来より、峠は自分の住まう領分とその向こうを隔てる境であり、峠を越えれば異界であったのでしょう。
十国峠の名のごとく十国を見渡す境。 実際には伊豆半島の付け根に当たる中心のようなところで、境というより円の中心という感じです。
ここからの広々とした眺めは格別です。
今年はナラ枯れが酷いのでドングリも少ないのかもしれません。遊歩道の両脇はイノシシが掘り起こした跡が延々と続いています。
あちこちでクマとの遭遇も報告されていて、不確かですが伊豆にいないといわれてきたクマの目撃情報まで出てきました。
姫の沢のケヤキもウリハダカエデも色付き始めています。冬に向かうこの季節、生き物たちの懸命な足跡です。
石仏の道も随分と秋が深くなりました。
ウメバチソウ: 今日一番のお目当て。今年も出会えました。
花はもちろん花柄を抱き込むようにつく心型の葉も可愛らしい。
リンドウ、タムラソウ、ヤマラッキョウ、ナギナタコウジュ。
この時期は紫色の花が多いですね。
センブリもうっすら紫がかって、小さな目立たない花ですがたくさん咲いていました。
クサボケが一輪。
もう咲き始めましたね。
10月14日(水)八丁池
あまり芳しいお天気ではないけれども、霧に包まれた森の木立の美しいこと! しばらく立ち止まり、またしばらく立ち止まりしてわが身も霧の中を楽しんでみます。
途中で休憩していらした年配の男性は初めてのコースだったそうです。
起伏が少なくタラリと歩きやすい平坦な森には、そこかしこに新たな踏み跡ができていて、霧に包まれた美しい樹々に見惚れていて道がわからなくなりかけたので私の後ろを追ってきた、と八丁池に着いた時におっしゃっていました。
歩き慣れた私でもおや?と思うような霧で、ふと自分もどこにいるのか分からないような感覚になり、ぼんやりしていると本当に迷うこともありそうです。
展望台に上ると一瞬霧が晴れました。
まわりの樹々が少し色付いてきました。
カエデもいち早く黄色くなり始めています。
定点観察中の大ブナとヤシャビシャク: ブナの周りをざっと測ってみましたら、目通りでおよそ6mありました。 立派なブナです。周りには地面を埋め尽くすようにブナの実が落ちているのに、すべて食べ尽くされてしまって一本として幼木が育っていません。 豊かな巨木の森の心配な現実です。
キッコウハグマ: ようやく一輪咲き始めました。
クルリとカールした花弁が可愛らしい。
大好きな花のひとつです。
水生地の崩落斜面:
昨年の台風19号の時に崩落したところです。
映画「天城越え」にも出てきた氷室はちょうどその真下で押しつぶされてしまいました。
ようやく改修工事が始まり、その様子を見ていると、こんなことができるのか!と驚くばかりです。
崩落斜面と本谷川を挟んだ対面の山の斜面とを結ぶワイヤートロッコが渡されていて資材を運ぶようです。
一体、どうやってこの急斜面の頂上を結んでワイヤーを掛けたのか、一日中見ていたくなります。
入口に素敵な計らいがありました。思わずシャッターを押しました。
10月7日(水) 秋の植物観察
先の見えないコロナ禍が続くものの、徐々に活動が再開されていて、熱海も観光客が戻ってきたと聞きます。
少し遠出もしたいのですが、行った先の地元の人にも悪いような気がして、近場を交互に行ったり来たりしています。
この道も頻繁に歩くようになって、その分草花たちの移り変わりが細かく分かります。いいこともあるということです。
曇りがちながら穏やかな日ですが、海には白波が立ち始めており、樹々に囲まれた遊歩道の中でもざわざわと変な風が吹き始めています。
姫の沢の展望台からの景色は全くの白黒。 海の彼方の台風の気配を感じます。
岩戸山まで歩いて折り返し、石仏の道にやってきました。
前回来たのは3週間ほど前だったでしょうか。
ススキの穂波も白くなり、秋も終盤の顔ぶれになってきました。
ウメバチソウ: 今日のお目当てでしたが、残念ながらまだ蕾。 もうあと1週間ほどでしょうか。
ちょうど隣に写りこんだセンブリもまだ蕾です。
アシタカマツムシソウもイズコゴメグサも終わりの時期を迎えていて、うす紫のヤマハッカとノコンギクが花の盛りを迎えていました。
9月30日(水) 八丁池
コロナの自粛、猛烈な酷暑、秋の長雨と続き、本当に久しぶりに気持ちの良い日になりました。
快晴の日の森の中は、大きなブナたちの影も色濃く、ドカンと立ちはだかるようです。
今日は朝の早いうちに富士山の見える方に来てみました。28日に富士山の初冠雪の発表がありましたが、今日は雪は見られません。 秋が深くなるにつれて富士山も美しくなります。
今日の八丁池です。水辺の草が少し色付いてきましたね。青空を映した伊豆の瞳です。
ヤシャビシャク:定点観察中。
黄色い葉っぱと未熟な実を見つけました。
実を手に取るのは初めて。
秋になるとこんなチャンスが訪れます。
このヤシャビシャクの着生しているブナも随分と大きく、測ったことはありませんが根元のグルリは5~6m、いやもっとあるかもしれません。次回は測ってみることにしましょう。
アケボノソウ: 本谷川沿いで見かけました。
まあ、まあ、まさに朝日の中に鳥が飛び立つようないで立ち。 美しい花ですね。
シロヨメナ: 秋の天城の林床はシロヨメナの大群落で埋まります。可憐な花ですが、鹿が食べません。
9月17日(木)
初秋の植物観察
姫の沢公園を抜けて東光寺に登っていくと、一面ヒガンバナの群落が広がるところがあります。
今年はまだ蕾の方が多く咲き始めたところのようです。もうすぐ秋の彼岸の入りです。
かつて「鬼が棲む」と言われた東光寺には、春秋のお彼岸の時にここを訪れると亡き人に出会うという言伝えがあるそうです。
私の母はこの近くの斎場で荼毘に付しましたので、ここに帰って来ているやもしれません。
しかしながら、晩年長くこの世で病に苦しんだ母を見てきた私は、「もう帰ってこなくていいよ」とつぶやき閻魔様にも奪衣婆様にも「よしなに」と手を合わせてきました。
それでも母を思い出し、何とはなく懐かしい気持ちになりました。
今日はこの花を見に来ました。
アケボノシュスランです。
湯河原に下る沢沿いの道はたいてい鬱蒼としていますが、今日はきれいに草刈りされていたので少し心配しました。
水辺の小群落は足の踏み場もないほど見事でした。
「曙繻子蘭」という名のとおり、曙の空のようなうっすら紅を差した花、小鳥のくちばしのようにあまり開き切らない可愛らしいかたち、繻子のような肌合いの葉。
絶滅が心配されている花でもあります。
途中、奇妙なものを発見。
真っ白でサンゴのようなかたち。
これはキノコなのか、菌従属栄養植物なのか、寄生植物なのか、あるいは粘菌か、地衣類か。
まったく見当がつきません。
森は奥が深い。
登り返して石仏の道にやってきました。
ここからは秋の草原の花たちです。
サワヒヨドリ: 秋の草原の主役のひとつ。 よく見ると筒状の花から細い糸のようなものが飛び出しています。
先が2裂した雌しべの先端で、少し離れてみるとクチャクチャっと糸が絡まったようにも見えます。
ヒヨドリバナ、ヨツバヒヨドリ、サワヒヨドリ、秋の七草のひとつのフジバカマは同じ仲間で、アサギマダラの成虫の吸蜜植物です。 2000㎞も海を渡るものもいるというアサギマダラは秋が深くなるにつれて南下し始めます。
イズコゴメグサ: 今年も健在。
フォッサマグナ要素の植物で絶滅危惧I類です。
アシタカマツムシソウ: こちらもフォッサマグナ要素の植物です。
サクラガンピとコガンピ: サクラガンピは薄黄色、コガンピは赤味かかった白い花。
サクラガンピは枝分かれしますが、コガンピはほとんどしません。
サクラガンピも伊豆、箱根、富士近辺のフォッサマグナ要素の植物で準絶滅危惧種です。
オミナエシ: 秋の七草のひとつですが、めっきり見かけることがなくなった花の一つです。
ワレモコウ:よくよく見ると面白い造形です。花弁はなく、一つ一つは4枚の萼片からなり、たくさん集まって丸っこい形になっています。
決して華やかな花ではないのに、切り花としてもとても愛されている花です。 バラ科のワレモコウは染めてみると赤味の色が染まり面白い染材です。
この草原は本当に豊かです。
ただ歩くだけならば1時間もかからないと思いますが、今日は2時間半かかってしまいました。
見始めるときりがなく一日中でもいたいくらいです。
確かに多種多様な草花が見られるのですが、絶滅危惧種や準絶滅危惧種、この地域のみに生育するフォッサマグナ要素の植物も多く、いつまでこの自然が守られていくだろうかと思います。
ここは防火帯を兼ねているので定期的に草刈りが行われることで草原を好む植物が生育しています。
人間との共存で維持されていく自然もあるのです。
一方、人間の手が入らなくなったことが大きな要因となっているナラ枯れはこのあたりでもひどい状況です。
写真のコナラは木肌に点々と木屑の盛り上がった穴が見えます。
たくさんのカシノナガキクイムシが入った跡です。 根元には木屑が散らばっています。
生き残るコナラもあるようですが、山を見渡すと枯れたコナラばかりです。
5~6年で収束するともいわれていますが、全滅してしまわないか心配です。