10月23日(水)
秋の草原
10月にやってきた2つの台風は大きな被害を及ぼし、熱海でも断水した地域がありました。
わが家は断水の恐れありと言われ、毎朝恐る恐る蛇口を開けて水が流れてはホッとし、貯め水をしてケチケチ使いつつ、「恐れあり」というだけでこれほど大変なのに、洪水の被害のあった地域の人たちの心労と疲労は如何ばかりかとつくづく思った一週間でした。
これからこんな台風がたくさん日本にやって来るかと思うと、愚かな人間の自業自得、自然のしっぺ返しと思えてならないのは私だけではないと思います。
断水の恐れからやっと解放され、久しぶりに晴れた日、たまった洗濯も打っちゃってやって来ました。
伊豆島の北の端からでも伊豆大島、利島、新島辺りまでは結構見えますが、その奥、三宅島まで見える日は稀です。一方、北方向、昨日初冠雪したらしい富士山は残念ながら雲隠れです。
ウメバチソウ:今日はたくさん咲いていました。
前回訪れた時は見られず、絶えてしまったのではないかと心配していました。 この可愛らしいこと! 蕾もまん丸で愛らしい。
雨と風をくぐり抜けて、よくぞ咲いた! というくらいほっそり可憐な花です。
ヤマラッキョウ: 草原の至る所ヤマラッキョウの花街道でした。
この季節、薄紫の花が多いように感じます。
センブリ: 昔、母が胃腸の具合の悪い時によく煮出しては飲んでいたのを覚えています。 ドクダミとともにかつてはごく身近にあった民間薬だったと思いますが、センブリを見かけることは滅多になくなってしまいました。
この季節に咲くリンドウ科の植物のひとつ、花も美しい。
リンドウ: まさしくリンドウ科、リンドウです。
アケボノソウ: こちらもリンドウ科。
花弁が4枚のもの、5枚のもの、6枚のものもありました。
変異が多いようです。
カナビキソウ: 草地に普通に見られるといいますが、私は初めて。
細長い葉、小さな小さな花。よく見ないと見つかりません。
イネ科やマメ科の根を宿主とする半寄生植物で、確かにメドハギやカヤの中に紛れるように生きています。
海と空に向かって飛び込むようなこの草原の道は何度来ても爽快です。
10月9日(水) 皮子沢歩道
樹々も地も空気も光も風も緑に染まりそうです。
特異的、驚異的、爆発的、壊滅的…等々と形容されるカワゴ平火山が噴出した膨大な火砕流や溶岩流に被われた不毛の大地も、3200年の年月を経てコケに覆われ、樹々が溶岩を抱き込みながら根を張り、巨木の森へと変貌し、その圧倒的な美しさに目を見張りながら歩く私たちが今います。
不思議な気持ちになります。自然はすごい。としか言いようがありません。
今日私たちが歩いているのは皮子沢に沿った歩道で、カワゴ平火山から流れ出した溶岩流の左側(西側)の縁に当たる所です。
カワゴ平火山は流紋岩という粘り気の多い溶岩を大量に噴出し、その厚さは50mにも及ぶそうです。
その厚みの中に膨大な水を涵養していて、その先端の流れ出すところがちょうど筏場。ワサビ田が広がっています。 これも破壊的な噴火のもたらしたもの。 自然は本当にすごい。
モミ群落: 樹齢200年とも言われる大木が林立しています。
矢筈山や登り尾にも大きなモミの木がありますが、これほどの群落は珍しい。
オシダ: かつてのカワゴ平にはオシダが生い茂っていたそうですが、今や全く見られません。
わずかに倒木の上に数株。
胞子嚢を確認。
オシダで間違いないようです。
緑に包まれていつまでもいたいような森。 カエデもたくさんありました。
秋の紅葉をまた見に来ましょうか。
10月1日(火)
秋の植物観察
姫の沢公園を抜けて野鳥の森から東光寺まで登ります。
途中、相模灘、川奈崎、大室山、矢筈山、天城の山並みが一望です。
秋の木漏れ日の下、一面のヒガンバナ。今年は少し遅いでしょうか。
アケボノシュスラン: 今日はこの花を見に来ました。
沢沿いに群れ咲く小さな花。
赤でも紅でも朱でもない、東雲の空の色のようです。
よくぞ名付けた「曙色の繻子のような蘭」。
アケボノソウ: 今日はアケボノ続きです。 こちらも初お目見え。 こちらの「曙」もまた一味違って美しい。
明けの空に最初に射した光とともに鳥が飛んだような・・・(表現力貧弱なり)。
ノブキ: 野にある蕗だからノブキ。 湿った沢沿いならば至る所で見かけ、これまであまり気に留めたこともありませんでしたが、よくよく見てみたらなんと素晴らしい! 大変お見それしました。
思わず皆でルーペを取り出し、じっくり観察。
全体を見ると花火のように見えます。
外側の花が雌花。
内側に固まっているのが両性花。
種は雌花にしか付きませんので、結実するとこんな姿になるわけです。
ヤマミズ: イラクサ科であることは分かりましたが、ウワバミソウに似てはいるものの花が違います。
なかなか行きつけませんでした。
小さな目立たない花ですが可愛らしいこと。
ヤマハッカか ?: アキノタムラソウだと思いましたが、花をよく見ればヤマハッカのようです。
ススキの波と群れ飛ぶトンボの中、石仏の道を海に向かって下ります。 爽快!
9月25日(水) 八丁池
大きな>被害をもたらした台風15号。 様子見にやって来ました。
いつも出発するしらばし脇の駐車スペースにもかなりの土砂が流れ込み、、激しい流れと土石に洗われて川床の石は随分と白くなっていました。
歩道は倒木や崩れがあちこち、沢筋よりもむしろ尾根に登ってしまった方が安全なので、久しぶりに八丁池に続く尾根を行くことにしました。
965mピークを確認、本谷歩道との交差目印に出て、少し本谷歩道を歩き、いつも歩く2本の尾根の間の緩やかな沢筋を登ってみることにしました。
この辺り倒木もなく、穏やかな森がゆるゆると続いています。
大きなブナ!と思って近づいてみると、何とヤマグルマでした。 私のトレッキングポールが1mほどですから、その太さが分かると思います。 天城には大きなヤマグルマがたくさんありますが、このヤマグルマも5本の指に入るようです。
満々と水を湛えた八丁池付近は平穏です。 水は下に向かって流れ、勢いと力を増しますのので、下の方ほど被害が酷いようです。聞けば河津側は相当な被害とのことです。
岩尾天井を下りて駿河灘方向を望むところに出てみました。 富士山は雲隠れですが、駿河灘に沼津アルプス、伊豆三山の山並みに田方平野の街並みが見えています。
こちらは猿山方向(だと思います)相変わらず山座同定は苦手です。中央が猿山、その右に続くのが小僧山、左側に見えているのは三方平と長九郎山ではないかと・・・・
ヤシャビシャク: 定点観察中のヤシャビシャクは宿主とともに無事。
シロヨメナ: この時期、林床は一面シロヨメナの群落です。
友人によれば、これも鹿が食べないので残っているのだとか。
9月19日(木)
富士山自然休養林
渋谷の交差点並みの混雑の夏山シーズンが終われば、これこの通り、水ケ塚の駐車場はがら空きです。
富士山は雲の中、これから登る二ツ塚は見えています。
富士山には二ツ塚をはじめ、たくさんの側火山があります。 登山道の入口近くにも浅黄塚があり行ってみました。スコリア丘はお椀を伏せたような形をしているので、その境目の岸辺から頂上目指してどこから登っても着くことができます。
カバ、カエデ、ミズナラ、モミの森は苔むして、あちこちに主のような老木。
思わず近づいてグルリ巡ったり、ウロを覗いたり、ついついしてみたくなりますね。
二ツ塚もやはりスコリア丘。 2歩進んで3歩下がる・・・
ズルガレの砂礫の山は毎度難儀をします。
今日は砂礫を避けて少し別の方向から登ってみましたら、厳しい環境の中でもわずかな草が生え、その中に守られるようにコゴメグサがたくさん咲いています。
ここで出会えるなんて嬉しい。
二ツ塚上塚山頂: 愛鷹はもちろん、大涌谷や金時山、大室山に矢筈山に天城の峰々。
伊豆大島も見えています。
残念ながら宝永山は雲の中ですが、反対側には山中湖、やはり秋ですね。空気が澄んできました。
フジアザミ: 今日はたくさん咲いていました。 ちょうど良い時期に当たったのは初めてです。
拳ほどもある下向きの大きな花がこんな栄養も水もないような厳しい砂礫地にへばりつくように生きています。
あちこちで花首だけがちぎれて落ちていて、はじめは人間、あるいは動物の仕業かと思いましたが、あまりに数が多く花を食べたような様子も見られません。
真偽のほどは分かりませんが、もしかすると、先日の台風の強風でもぎ取られたのかも知れません。
森林限界の色付き始めた草紅葉は見事でした。
10月になったらカラマツの黄葉を見にもう一度来るとしましょう。
ミヤマハナゴケとヤグラゴケ?: 「コケ」と名が付きますが、「地衣類」です。
ミヤマハナゴケの群落が一面に広がっています。
ヤマシャクヤクの実: ピンボケが残念。 優雅な花から想像できないちょっと怖いような実です。
ダイモンジソウ: 自生しているのは初めて見ました。
9月11日(水) 初秋の植物観察・岩戸山
週初めにやって来た台風15号は、伊豆半島をかすめて通り、どうなることやらと思いましたが、幸い私の住まいの近くは目立った被害はありませんでした。
しかし、近隣の伊東市や河津、下田はじめその爪痕はかなりのものでした。
早い速度だったため、近づいてきて横を通り過ぎていく様が手に取るようでした。
伊豆半島が一番酷いかと思いきや、その先の千葉では相当な被害で、今だに電気、ガスが復旧していないところも多く、私の友人もようやく昨日電気と水道が復旧したとのことでした。
非常食、防災用品は備えてはいますが、実際自分の身に降りかかったらどうなることやら想像もつきません。
年々自然はトゲトゲしくなっていくようです。
天城も沢沿いも崩れているかもしれないので、近場の岩戸山へ植物観察にやって来ました。
アシタカマツムシソウ: 房総、伊豆半島、愛鷹山系の固有種です。
イズコゴメグサ: その名のとおり小さな花に小さな葉。
フォッサマグナ要素の植物で絶滅危惧1B群指定。
光合成もしますが、他の植物の根に自らの根の一部を食い込ませて養分を採っている半寄生植物です。年々数を減らしているようで心配です。
オトギリソウ: オトギリソウの仲間はいろいろあり、見分けがとても難しい。 ポイントは花や葉にある明点と黒点、黒線。 ルーペでじっくり見ないと見えません。 この写真は珍しく良く撮れていまして、花に黒点と黒線があり、茎を抱く葉の形からオトギリソウだと思います。
オミナエシ: 秋の七草のひとつですが、自然の中で滅多見かけなくなりました。
因みに秋の七草、全部言えますか? 春の七草と違って難しいですね。
オミナエシ、ススキ、キキョウ、ナデシコ、フジバカマ、クズ、ハギ。
「オスキナフクハ=お好きな服は」と覚えるといいそうです。
サワヒヨドリ:フジバカマによく似ています。
いずれもアサギマダラの成虫の食草です。
幼虫は有毒なキジョランの葉を食べて体内に毒を貯め、外敵に食べられないようにしているそうです。2000kmもの渡りをするアサギマダラはの力の源は、体に貯めた毒とこの花の蜜にあるのでしょうか。
キツネノマゴとヤマトウバナ:一見よく似ていますが、花をよくよく見てみれば違いますね。
石仏の道の友人:石仏ではありません。
しばらく体調不良で休んでおりましたが、めでたく復帰。
良かった 良かった。
↓カットしようかとも思いましたが・・・・
9月2日(月) 八丁池 初秋
本当に久しぶりです、富士山。
しばらく、しばらく立ち止まり、流れる雲に見え隠れする姿に見惚れました。
大小屋天井、白砂天井、岩尾天井と続くなだらかで平坦な天井は、歩きやすいといえば歩きやすいものの、平坦なだけに尾根がはっきりせず方向を見失いがちです。
いつもと違った尾根を八丁池に向かって登ってみましたが、赤テープあり。
どこを歩いてみてもやっぱり先に歩いている人が必ずいますね。
少し色付いた水辺のカヤツリグサ、下界よりずいぶんと赤いアキアカネ。
まだまだ夏の陽射しは強いけれど、今日の八丁池は秋の気配です。
定点観測中。
アオフタバラン: とても地味で小さく、よくよく目を凝らさないと見過ごします。
ヤシャビシャク: たくさん実が付いています。
クモキリソウだと思ってきた: 初めて花を接写・・・ん、ん、ん・・・?
葉はよく似ていますが、どう見てもクモキリソウの花には見えません。
調べ直したところ「ジンバイソウ」のようです。
「神拝草」と書くそうです。
確かに神様を拝んでいるような姿に見えるようにも思えます。
なんと長い間気づかずに来たことか! それでもずっと観察してきたからこそ分かったことと自分を慰めつつ、まさに拝みたくなりました。
葉について言えば、クモキリソウの葉は地面から斜めに立ち上がりますが、ジンバイソウは地面に張り付いたようになります。葉の付き方ではアオフタバランに似ています。
葉の出方の角度にはずっと違和感を抱いてきたのは確かです。
違和感を持った時は調べ直すのが正解だと、今回改めて思いました。
それでも正しい名前が分かって嬉しい。 今日一番の収穫でしょうか。
ブナの倒木: 命尽きてもたくさんの新たな命のゆりかごとなっています。
ギボウシの花が満開でした。
ヤマグルマ: 今日も奇妙なヤマグルマ発見。 どうしてどうなったらこうなるのやら・・・・
8月18日(日) 岩戸山
台風の影響の長雨で一週間ほど歩けなかったので、運動不足解消に友人と二人近くの山歩きに出かけてみましたが・・・・・
伊豆山神社から岩戸山へのコースは登山口までが長く、アスファルトの道が灼熱地獄のようでした。 登山口に着いたらもう帰ろうか・・・というセリフがどちらかの口から出そうなところを何とか踏みとどまって、岩戸山まで登ってきました。
ともかく暑いのは当たり前の台風一過。 それでも登山道に入れば木陰は別世界、谷から吹き上げる風の心地良いこと。
木陰でおにぎりをパクつきながら、くじけそうだった先ほどの自分たちを思い出せば可笑しくて、よく頑張ったと互いに自画自賛してすっかり蘇りました。
写真を撮るゆとりもなかった往路でしたが、盛夏の草いきれの石仏の道は心も軽く下ってきました。
草花はすでに秋の気配でした。
ヤマトタマムシ: 子供の頃はよく見かけたものでしたが、なんと久しぶりの対面でしょうか。 50年は経っているかも。
今は環境も変わって随分と数も減ったと聞いています。
美しいですね。
こちらは母から譲られたタマムシの帯留め。 とても好きで大切に使っています。
8月8日(木) 八丁池 夏
いくら山と言えども低山は暑い。
暑いけれどもやっぱり心地良い。
青空と樹々の緑を写して水を満々に湛えた夏模様の八丁池。