5月17日(木)
猿山のアマギシャクナゲ
猿山から小僧山にかけての稜線に続くアマギシャクナゲの群落は、伊豆一番ではないでしょうか。
伊豆でも一番の深山と言われ、なかなか訪れるのが難しいからかもしれません。
天気予報では晴天。
朝のうちだけかと思っていた靄は登るにつれてどんどん濃くなり、猿山に近づくにつれてパラパラし始めました。
今年はすべての花が早いので、アマギシャクナゲも1週間ほど早くほぼ満開。
お天気が良ければさぞ見事でしょうが、幻想的な靄の中の群落もまた趣きあり。
私たち二人独占の花の尾根道でした。
他ではお目に掛かれない、ほんのり赤味を残す白いシャクナゲも点々と咲いています。
猿山の大杉: 猿山に登る前に少し寄り道して再訪しました。 滑沢渓谷奥の太郎杉とどちらが大きいか比べようがありませんが、こちらは「二郎杉」とも呼ばれるそうなのでやはり2番手なのでしょう。 訪れる人も少ない山中に静かに生きてきた大樹を前に、ただ崇敬の気持ちを持って見上げるのみです。
猿山の大ヤマグルマ: 伊豆で最大といわれています。
倒れて横たわったまま根を伸ばしています。
ヤマグルマは天城のあちこちで見かけますが、根上がりしたもの、倒れたもの、自然の厳しさを体現したような姿のものが多いですね。逞しいのでしょう。
猿山から小僧山にかけての稜線は支尾根が多く、ともかく間違えないように地図とコンパス、スマホGPSで確認しつつ慎重に進み何とかクリア。
小僧山を過ぎて広いテラスのような場所に出るとホッとします。
ブナやヒメシャラの美しい森がシンと広がっています。
ここは猿山へ向かう道と三蓋山へ向かう道、滑沢峠へ向かう道の三つが合流する地点で「三方」というのだそうです。
今年のシャクナゲはこれで終わり、これからアマギツツジとヒメシャラの季節がやって来ます。
5月10日(木)
裏か表か、天城連山
伊豆の最高峰・万三郎岳とそれに連なる石楠立、馬の背から万二郎岳は天城連山と呼ばれています。
南側に住む人たちは南側からの天城連山を表と思っており、一方で北側に住む人たちは北側からを表と言っているようです。
今日歩いたのは、コースで言うなら裏コースです。
萬城の滝から地蔵堂川に沿って遡った尾根を伝って万三郎岳を目指しました。
伊豆最大の火山だった天城山の南側は、崩壊が進んでかつての山頂部も失われてしまっているそうですが、地形図を見ると北側は火山らしい痕跡の残る斜面になっています。
地図をツラツラ眺めているうちに何だか登れそうに思えてきて、登りたくなり、そんな時にはMさんに相談。では、行ってみよう!ということに。
登るにつれて地蔵堂川の源流部へと入っていきます。
一飛びできる程のまるで毛細血管のような小さな流れがあちこちに現れます。
こうした小さな流れが集まって地蔵堂川となり、さらに伊豆の大河・狩野川に流れ込みます。
万三郎岳手前の尾根: まだ若いブナ林が尾根一面、見渡す限りです。
素晴らしい!の一言。
登山道合流地点の赤テープ: なんと、今日初めての赤テープです。
伊豆半島中、隈なく歩いているMさん。 こんなところに! というような山奥でも人の歩いた痕跡テープを見かけないことはないと言います。
今日登って来た尾根は、確かに人の立入った痕跡がなくて、テープもありませんでした。
私たちが初めて、少なくとも長らく人の歩いたことのない道ということでしょうか。
今日の万三郎岳です。
石楠立から馬の背にかけて、アマギシャクナゲもトウゴクミツバツツジもちょうど見頃、靄の中で幻想的でした。
帰路は馬の背から緩やかに下る広尾根を下ることになりました。
道も付いていたし、真直ぐ下りるだけ・・・しかしながら、見事に外しました。
広尾根は要注意というのはよくわかっていたはずなのに、チェックを怠るとこうなりますね。
いい勉強になりました。
どちらが裏か表か。 どちらが裏でも表でも美しい天城でした。
5月1日(火) 万三郎岳
3年ぶりの万三郎岳。
天城縦走路のうち、戸塚峠から小岳を経て万三郎岳まではまだ歩いたことがありませんでした。
往復およそ20km。
万三郎岳お昼到着目標、無理なら引き返すと決めて水生地を出発しました。
水生地歩道のブナとヒメシャラ: 本谷川に沿って水生地歩道を遡っていくと、水は地に潜り涸沢になります。
そのあたりから見事なブナとヒメシャラの森が広がり始めます。
フィリピン海プレートに乗って南からやって来た伊豆半島の土地は新しく、川の歴史もまた新しいのです。
さらに東西南北さほどの大きさでもないので川の源流も意外に近くにあります。
天城の森を歩くと、水の生まれる所、源流部をよく見かけます。
ブナが落とす大量に降り積もった落ち葉はたっぷりと地下に水分を蓄えています。
神秘的で神聖な感じがします。
先週も来た八丁池。
いっそう春めいています。
お昼に万三郎岳到着。
何とか来れましたね。
おにぎりをチャッチャと食べて引き返します。
帰路、小岳へ登り返す手前から振り向くと、万三郎岳、馬の背、万二郎岳、箒木山が見えます。
なんだか嬉しく大満足。
今日の目的は「自分の体力でどれくらい歩けるのか」でした。 知っておくのも大切な事と思いながら、20㎞はやはり長く、ともかく登山道をセッセと歩くだけになってしまいます。
地図とコンパスをにらめっこしながら尾根歩きをしたり、植物をゆっくり観察したり、露頭を見たりと、ゆとりのある山歩きの方がいいですね。
水生地に残した車が見えてきたらホッとしました。
ウンゼンツツジか?: 水生地歩道でお水を飲もうと立ち止まって見上げたら、偶然真上に咲いていました。
桜の花くらいの薄いピンクの小さな花で、葉は1㎝あるかないか。
雲仙の名がついてはいても雲仙にないそうで、天城にはあると聞いていました。
テンナンショウ: サトイモ科テンナンショウ属の仲間は多様で、ほとんど何が何やら分かりません。
トウゴクミツバツツジ: 今にも咲きそう。
シャクナゲも美しい天城山ですが、トウゴクミツバツツジも負けません。
根上がりのヤマグルマ: 戸塚峠の少し手前、今日も無事再会。
ヘビブナ: 小岳近く、何があったのか尋ねてみたくなる。
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NEW!
4月26日(木)
八丁池から鉢窪山へ
八丁池へと続く尾根のブナ林の樹間は、芽吹き始めたばかりの薄黄緑のレースのベールがふんわりとかかったかのようで、美しい季節です。
昨日の雨で八丁池はあふれていて、モリアオガエルの鳴き声がします。
産卵ももうすぐでしょう。
白砂天井のアブラチャン:
知り合いの大株・アブラチャン。 友人と一緒に写すと大きさがわかります。
枝先に萌黄色の新芽を付けていっそう美しい姿です。
大ブナの倒木: 天城ではブナの幼芽も鹿に食べられてしまって、ほとんど生き残れませんが、鹿の届かない倒木の上から芽吹いた子株が育ち始めています。
ナベワリの花: ちょっと失礼して下向きの花をパチリ。
変わった花です。 猛毒だそうな。
白砂天井をゆるりと下ってまずは丸山へ。三角点を確認。
その先の鉢窪山も大室山と同じく「お椀を伏せたような」と形容されるスコリア丘と呼ばれる火山のタイプです。
鉢窪山の山頂には火口跡のお鉢が残っています。
ここから流れ出した溶岩が浄蓮の滝を作ったと言われています。
今日は通しでコンパスと地図を頼りの(スマホのGPSもカンニングしつつ)地図読 み練習でした。
いつも感心することながら、いくら計測技術が発達している現在とはいえ、地図は本当によくできています。
地形図は見ているだけでも美しく、歩く前のイメージウオーキングもまた楽しいものです。
もっと若い時にやっていたらなあ・・・と思う今日この頃です。
今日は久しぶりに山から下りて「わさびソフト」を食べました。
暑くなりましたね。
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4月19日(木)
箱根・湯坂路
大涌谷です。
中学の修学旅行で来て以来、なんと45年ぶりです。
観光施設は増え、海外の旅行者がほとんどで、まるで私たちが外国に来たかのようです。
宮の下から箱根登山鉄道に乗り、さらにロープウエイでやって来ました。
大涌谷が見えてくるとゴンドラの同乗者一同から「わあ~~~」と声が上がります。
今なお活動中の箱根火山。 地球の息づかいを感じる光景が眼下に広がります。
これは45年前と変わっていません。
今日は湯本から湯坂路と呼ばれる鎌倉古道を歩いてきました。
浅間山まで緩やかながら、ひたすらの登りで、石畳や木の根道、萌え出たばかりの緑、桜の花吹雪の舞う、まさに麗しの春の登山道でした。
浅間山山頂 : なだらかに広く、駒ヶ岳が間近に見えてきました。
千条の滝 : 鷹巣山から蛇骨川に沿って下ったところ。
高さはわずか3mほどながら、横に長くてまるで流れ落ちる水のカーテンのようです。
太閤の岩風呂: 蛇骨渓谷にあり、秀吉の小田原攻めの時に入ったものだそうです。
ナベワリ: コビサワラ原生林で見られなかった三大毒草の一つにここで遭遇。
花は終わりかけていましたが、満足、満足。
日本有数の観光地・箱根。 近いのでむしろなかなか来れないでいました。
観光客が多過ぎにはたまげましたが、箱根火山の作り出した外輪山、内輪山は一度はぐるりと歩いてみようと思います。
●●● 植物 ●●●
4月13日(金) コビサワラ原生林
萬城の滝に車を止めて、新緑の地蔵堂川を滝を愛でつつ上流へと遡っていきます。
川沿いにはワサビ田が広がっていて、まさに「目に青葉」の季節です。
ここのワサビ田には日除け用の寒冷紗ではなく、ヤマハンノキが昔のままに植わっているのがいいですね。
土石流の作った美しい露頭はチョコレートケーキの断面のよう。
溶岩流の切り通し。
さらに上流、コビサワラ原生林へ。
途中の沢沿いにはトリカブト、ハシリドコロが群落を作っています。
三大毒草の三つ目、まだ出会ったことのないナベワリを探してみましたが残念ながら見つかりませんでした。
コビサワラ原生林です。
アカガシ、ヒメシャラ、イヌガシ、モミ、ブナ、タブノキ、アマギツツジ・・・と種類が豊かです。
漢字ならば想像もつきますが、「コビサワラ」という不思議な名前の謂れははっきりしないようです。
植林地に囲まれてここだけポッカリ手つかずの巨木の森が広がっているのは「切ると障りがある」と言われたからではないかとの説があるそうです。
三大毒草が自生していることも何か関係がありそうな、なさそうな。
切り倒された朽ち木の年輪を数えてみましたら148歳。
根元の直径が人の背丈を越すほどの倒木も、倒れてなお見事です。
こちらは148歳から類推すると300歳は越えていそうです。
前回の伊東アルプスがなかなかにハードだったので、今回の散歩気分のコースの締めは、美味しいラーメン屋さんです。こんなところに! というような場所にあって、金土日のみ営業。 それでも次々お客さんがやって来ます。
友人はワサビラーメン、私はカレーラーメンです。
食べ物の好き嫌いはないものの、松花堂弁当のようにあれやこれやと迷い箸がしたい私の唯一不得手は「一品盛り切り」です。
そんな私でもとても美味しくいただきまして、お土産に私は醤油ラーメンを、友人はカレーを買って帰りました。
また食べに来たいと思います。
中辛でも結構辛かったので、次回はシンプルなヤツにしよう。
4月4日(水) 伊東アルプス
昨年歩いた時の桜の尾根道のあまりのすばらしさに、今年もやって来ました。
でも、そうでしたねえ・・・忘れていたわけではありませんが、 いくつあったか忘れるほどのアップダウンの連続で、しかも急斜面。 両手両足、トレッキングポール総動員で登ったり下りたり、滑り落ちたりの繰り返しでした。
鹿路庭峠から北に向かう尾根道の両側には、だれが植えたかオオシマザクラの並木が延々と続いています。
少なくとも7~8㎞はあるでしょうか。大木が多く、かなり昔に植えられたようです。
空を覆うように広がった満開の白いオオシマザクラは青い空に溶け込むようで、まるで空からハラハラと花びらが際限なく降ってくるようです。
私は坂口安吾の「桜の森の満開の下」がとても好きで、ゾッしながら時々読み返しますが、そんな雰囲気を思わせる光景です。
間の山の山頂から白い桜の尾根道がうねりながら続いているのが一望できます。
あの下をずっと歩いてきたのですね。 来年もまた必ず来るとしましょう。
帰路、お土産をチョイと掘ってまいりました。
われら二人の掘りの技は一気にイノシシ級となり、あっという間にご覧のとおりであります。
美味しくいただきました。
4月2日(月) 函南原生林
4月の第一週目は毎年恒例、函南原生林の植物観察です。
やっと芽吹いたばかりの小さな小さな花たちに最初に出会うこの時期がとても好きです。
今年の桜は例年に比べて10日程早く、原生林も早いかと思いきやむしろ遅め。
確かにこの冬は熱海のわが家のあたりもよく雪が降りました。
コースは大体5㎞弱、その気で歩けば1時間半ほどで歩けますが、植物観察は毎度超スローペースで本日はおよそ5時間。
これでもまあまあ早い方。
今日ははるばる南伊豆から来てくれた友人たち4人を含めて総勢7人。
早春の原生林を楽しんでいただけたでしょうか。