10月29日(木)
滑沢渓谷から二本杉峠へ
滑沢渓谷は、滑沢火山から流れ込んで谷を埋めた溶岩を、渓流が長い歳月をかけて滑らかに磨き上げたとても美しい川底を見せてくれます。
高温の溶岩が冷えて固まる時に出来る節理と呼ばれる割れ目も角が取れて滑らかです。
水しぶきをあげて流れるというよりも、まさに滑るように流れています。
川沿いの露頭では、まるでバームクーヘンかチョコレートのような断面が観察できる火山による土石流の跡もあります。
今日の山歩きの第一の目的はこの二つ。
じっくり心ゆくまで観察。
これがどうやってできていったか・・・
学術的には正確な説明もされることでしょうが、私は勝手に妄想と空想をすると止まりません。
しばらく歩いて 天城一といわれる推定樹齢450年の「太郎杉」に到着。
再び滑沢渓谷の入口まで戻って踊り子歩道をゆうゆうの森へ。
ここから二本杉峠まで登ります。
いくつかの沢や涸れ沢を渡りながら、所々荒れた山道をひたすら登ります。
二本杉峠はかつての天城峠です。
まだ10時だったので、その先の三蓋山まで行こうかと思いましたが、パラパラと降り始めました。
林間の歩道は雨に濡れることはないものの、予定通り戻ることにしました。
伊豆山稜線歩道は天城峠まではほぼ平坦な道。
少し早めながら、色づき始めています。
古峠にて昼食。
周りを見渡すと、軒並み鹿に皮を食べられた跡のある木々が生えています。
鹿の食害はひどいようで、鹿の食べないアセビばかりが目立つ所や、立ち枯れの所も見かけます。
天城峠に昼前に到着できたので、少し遠回りして水生地まで歩き、藤が沢歩道を少し入った所にある氷室と人工池の跡を訪ねました。
氷室は松本清張の「天城越え」の舞台となった所です。
かつてここで天然氷を作っていた人の営みの跡は、森の中にひっそりと苔むしています。
さらに、しばらく沢沿いを歩くと なまこ岩に着きます。
天城火山の溶岩流と推測されている10万トンともいわれる巨大な岩塊です。
大きさもさることながら、その上に多くの植物を茂らせて風雪に耐えてきた風格あり。
滑沢渓谷の入口まで戻って本日の周遊終了。
およそ16kmでした。
今日も湯ヶ島の「河鹿の湯」に立ち寄ってから、帰路につきました。
ナチシダ
河津の七滝が北限地とされていますが、さらに北上しているようです。1m程になる大型のシダで、基部で3裂、全体を見ると五角形をしています。
ミツマタ
花芽のようですが、実は実。
ホソバマムシグサ
・・で間違いないと思います。
以前にも見かけましたが、もう一度、花を確認したいものです。
キッコウハグマ
小さくて見逃しそうですが、花の時期に出会いたいもののひとつ。
葉がキッコウ(亀甲)の形をしています。
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NEW!
10月22日(木)
十国峠から岩戸山
初めての山歩きの友人とともに、近場の山へ。
熱海には姫の沢公園という市民公園があります。
園内を廻るコースはいくつかあって楽しめますし、ここを通って十国峠、東光寺、岩戸山、石仏の道を回るコースは、道も良くて初めての人でも無理なく歩けます。
あいにく靄っていて視界ゼロでしたが、その分 地面をじっくり見ながら、秋の盛りの山野草を楽しみました。
センブリ
有名な胃腸の漢方です。
ヤマラッキョウ
同じ仲間のノビルは春に花が咲きます。
ウメバチソウ
可憐ですね。初めて見ました。
マツムシソウ
元祖、抗高脂血薬といわれる薬効があります。
リンドウ
草に埋もれるように たくさん自生しています。
アキノタムラソウ
見た目はアザミと全く変わりませんが、葉が違います。アザミのようにトゲトゲしていません。
サラシナショウマ
どちらかというと夏の花ですが、一つ残っていました。
コゴメグサ
ホソバコゴメグサ、タチコゴメグサ、ミヤマコゴメグサといろいろありますが、
未同定
ナギナタコウジュ
シソ科特有の匂いがします。片側だけに花が付くのでナギナタの名が付いています。
10月15日(木)
コビサワラ原生林
天城の万二郎岳、万三郎岳の北側、地蔵堂川をさかのぼった先にあるコビサワラ原生林。
どうしてカタカナなのか・・・ この地名の由来がはっきりとせず、どんな漢字を当てていいのか分からないからでしょう。
萬城の滝に車を置いて地蔵堂川沿いの林道を歩きます。
萬城の滝は一応立ち寄ってみましたが、残念な有様になっているのを確かめただけでした。
柱状節理の美しい、滝の裏側からも見ることができて、裏見の滝とも呼ばれていたそうですが、岩の崩落で危険になって、その美しい柱状節理の割れ目をすべてコンクリートで固めてしまいました。
何かほかに方法はなかったのでしょうか。
危険はなくなったのかもしれませんが、自然の美しさは失われてしまいました。
少し上流の小滝は、あるがままの姿でホッとしました。
川沿いにワサビ田が続きます。
ワサビ田の中に生えている木はハンノキです。
ハンノキは、川沿いの湿潤な土地を好み、ワサビ田の日よけとして植えられています。
熱海のみならず、川が少ない伊豆には同じ仲間のヤシャブシは至る所で見られますが、ハンノキは意外に珍しいのです。
実もヤシャブシとよく似ていて、染料としても使えますが、私は今だその機会はありません。
ちょうどワサビ農家の方がおり、少し話を聞かせていただきました。
ワサビには青軸と赤軸があって、青は1年で収穫できるそうですが、赤は2年かかり、ゆっくり成長する分赤軸の方が風味がいいそうです。
ワサビの粕漬けには色が写らない青軸が使われるそうです。
よく見ると、田に直接植えられているものもあれば、ポット苗の状態で植えられているものもあります。
昔と違って、ワサビ田の水もポンプで汲み上げて田に入れるようになり、水温も高くなり、泥も混じるようになり、直植えだと、病気にかかりやすくなったという事です。
一時間余りでコビサワラ原生林の入口に到着。
しばらくスギやヒノキの人工林の中を登って行きます。
この原生林は三大毒草と呼ばれるトリカブト、ハシリドコロ、ナベワリの自生地として知られていますが、今は季節外れで、わずかにトリカブトが見られただけでした。
春に見に来たいと思います。
原生林は一周30分ほどで回ることのできる広さで、ブナ、ケヤキ、ヒメシャラ、モミは見事な大木です。
そのほかアカガシ、タブノキ、コシアブラ、アマギシャクナゲ、シロダモ、イタヤカエデ、アブラチャンなど、鬱蒼とした森となっています。
八丁池近辺もブナとヒメシャラの混成林がありますが、標高700m余りと低いコビサワラの方が植生は多様です。
こうした森がこれからも残りますように願わずにはいられません。
サルノコシカケ ケヤキに手を回している人の左下に写っています。 これなら腰かけられそう。
イズカニコウモリ
伊豆の固有種です。
カエル
ほんの2〜3cmほどの大きさ。未同定。
アケビ
10月8日(木)
天城の森
秋らしい好天が続いています。
天城の森をゆったりと歩きました。
水生地から本谷川沿いに水生地歩道を昇って行きます。
本谷川は狩野川に注ぎ駿河湾へと流れます。
すぐ近く、河津七滝のかかる河津川は相模湾へと流れます。
天城峠が分水嶺となっています。
水生地 (すいしょうち) とは、まさに「水の生まれるところ」
川沿いに登って行くと水量は増し、水音も高くなり、小さなワサビ田もあります。
ところが急にパッタリ水音が絶えると、白っぽい涸れ沢になります。
この石の下を少し掘ると水が湧いてくると聞きました。沢として眼には見えなくても、地面の下で密やかに水を集めている気配が静かにします。
ここが水源地です。
とても不思議な気持ちになる所です。
さらに登って行くとブナとヒメシャラの森の中に入ります。
どれ程の年月の果てにこの森があるのか、幾重にも散り敷いたふんわりした地面を歩くと、ただただ穏やかな静かな気持ちになります。
マメザクラも林間に見られますので、春の花の季節にも また来たいと思います。
写真ではよく分からないかもしれませんが、八丁池の展望台からは池の向こう側に富士山がくっきり、大島も下田の海も戸田も伊東もよく見渡せました。
今日は初めての下り八丁池歩道を歩きました。
この道は大ブナの森の中を抜けて行くほぼ平坦で歩きやすい道です。
天城は展望のきく所が少ないのでつまらないという人も多いとも聞きますが、、天城の良さはなんといっても静かな森のこの豊かさに尽きるように思います。
「精霊ブナ」と思われる大ブナはロープで囲いがしてありましたが、どのブナもその大きさは負けず劣らずで、すべて精霊に思われるほどでした。
あまり見事で写真を撮りまくりましたが、写真では伝わりませんね。
是非、歩いて欲しいと思います。
下り八丁池歩道から本谷歩道に出て、水生地歩道に合流し、朝来た道を水生地まで戻りました。
季節が移り、歩くには快適な一日で、12kmほどの行程でしたが、昼過ぎには戻ってくることが出来ました。
今日はフルコース。
ワサビソフトを食べて、湯が島の温泉に寄りました。 狩野川べりの共同浴場「河鹿の湯」
地元の人によれば、このところの晴天続きで川の水量が減って、温度が低めだそうです。
水量が増えると、逆に湯温が高くなるそうです。反対のように思われますが不思議ですね。
カンアオイ
カンアオイ、アオイ、サンシンと言われる仲間はたくさんあって、同定が難しいもののひとつです。
天城には固有種のアマギカンアオイやシモダカンアオイがありますが、花が違うように思われます。
これは恐らくカントウカンアオイではないかと思われます。
ガマズミ
もうこんなに色付いてきました。
枝葉は染めにも使い、実は果実酒にもなります。
ツチアケビ
今日も立派なツチアケビを見つけました。
マメザクラ
バライチゴの実
5月に天城に来た時は、花がたくさん咲いていました。
野イチゴの中では大降りの花ですが、実も大きめです。
時期としては終わり頃に当たりますが、まだまだ点々と残っていました。
サンショウ